世間様のあれこれについて、何となくこうなってるんやろうなぁと思っていることは多い。ただ、それは、身の回りで見聞きしたことに、ニュースなどから得た知識を加味した漠然たるイメージでしかない。いったいそれって正しいんやろうか。

『人生の歩みを追跡する』
石田浩、有田伸、藤原翔編著
3200円(勁草書房)

若年者・壮年者を10年以上追跡した調査。個人の経験や選択が、どんな格差や不平等につながるかを浮き彫りに。

 厳密に調べ上げるのは不可能だろうが、およその傾向なら分かるかもしれない。しかし、そのための調査があるとは知らなんだ。2007年から行われている「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」、通称「東大社研パネル調査」がそれである。

 就職、転職、結婚、出産といった重要な出来事。職場環境、家庭環境、友人・親子関係といったさまざまな状況。通勤、仕事、食事、余暇といった生活時間。さらに、健康、価値観、意識、幸福度、収入など。千人単位で何年もの間、個人を継続して追跡する調査が行われた。その膨大なデータに基づき極めて多角的な解析を行った成果が『人生の歩みを追跡する』だ。

 収入、男女間格差、健康、婚活の効果、ワークライフバランス、学歴の志向、希望、幸福感、などといった、ちょっとのぞき見してみたくなるようなことが、データを基に浮き彫りにされてくる。タイトルの通り、人生の歩みというのはこういうものなのかと、眺めていて飽きることがない。

 例えば、健康について。男性では結婚により健康度が向上するが、女性ではそうでもない。そして、健康の悪化をもたらすのは「いつも納期に追われる」職場や、「今後1年間に失業する可能性がある」状況。やっぱりそうやったんやという感じがしませんか?

 配偶者と一緒に食事をする回数についてのちょっと意外で面白い結果なんかもある。ワークライフバランスがうまくとれてもあまり影響はないが、男性が「午後7時までに帰宅」できると増加するらしい。これなんか、みんなの生活改善に役立ちそう。

 実に面白くて豊富な内容なのだが、惜しむらくは、完全な学術書で相当に読みにくいということ。ぜひ、どなたかに、内容のエッセンスを分かりやすくまとめてもらいたい。ベストセラー間違いなしやと思いますけど。

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