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『だれもが〈科学者〉になれる!』
チャールズ・ピアス著
門倉正美ほか訳
2400円(新評論)

生徒に、問いと答えをセットで与えるのではなく、自発的に問いを立てて答えを科学的に探究する、学ぶ力の育て方を説く。

 大学入試改革についての議論が賑やかだ。現行の制度に多くの問題があることは間違いない。それ以前に、そもそも大学入試が目的化している教育の現状こそが問題ではないのか。

 『だれもが〈科学者〉になれる!』という書名を見た時には驚いた。科学者という生業はそんなに甘くないぞ。しかし、内容は、職業としての科学者ではなく、米国の小学校でおこなわれている「探究理科」教育についての紹介だった。

 「子どもは本来好奇心が旺盛で、自ら問い、探究する科学者である」という前提での教育だ。小中学生に講義をした経験から全く同感。日本の受験勉強はその能力を破壊する方向でしかない。

 子どもたちは、興味を持ったテーマについて調べながら、科学的な考え方、方法論を身につけていく。教えている方だって、知識を詰め込むだけの教育よりもはるかに楽しいはずだ。

 すごいのは、その指導が単に科学活動にとどまらず、言語活動にまでおよぶところである。参考図書を読み、プレゼンし、評価を受ける。さらには、なんと、研究費の申請書作成まで。

 まさに大学院教育と同じことが小学校でおこなわれている。その結果、子どもたちが大きく成長していく。なんと素晴らしいことなんだ。

 文系、理系と分けること自体があまりよろしくないが、科学というと理系の営みと思われることが多い。しかし、実際には、申請書や英語論文の執筆など文系的な素養も重要である。なによりも、論理的な思考や説明にはかなり高度な言語能力がなければならない。