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 人口14億人といわれる中国。一人っ子政策の結果として人口はまもなく減少局面に入ってきます。かつては、女性が5人も6人も子供を産むのが当たり前だった時代がありました。しかし、過激な一人っ子政策をやめて複数の子どもを設けることを奨励しても、中国の出生率は人口維持レベルには回復しないだろうと考えられます。

『‌中国 人口減少の真実』
村山宏著
920円(日本経済新聞出版社)

世界最多の人口を抱える中国。発展を遂げてきたこの国で、人口減少が始まると、何が起きるかを考察していく。

 『中国 人口減少の真実』は、人口問題にまつわるニュースを入り口に、巨大な中国の成長や社会の変容を手に取るように見せてくれる本です。一人っ子政策を続けた結果、小皇帝ともいわれる箱入りの子どもたちが出来上がりました。社会の風潮自体が、子どもを貴重なものとして扱うようになったからです。子ども一人一人にかける手間暇やお金は増え、経済成長と共に子どもに対する教育熱はヒートアップしていきます。すると、そうした社会の風潮がかつてのような多産型のライフスタイルに戻れなくなる方向へと働くのです。

 その裏で、一人っ子政策を続けてきたことによる弊害として男女の人口格差、無戸籍者の存在、子どもの誘拐や、ベトナムなど東南アジアからの人身売買などの問題が生じています。

 人口を切り口にすると、中国がこれまで経済成長に利用してきた農村から流入する労働者の現状と人口減少が中国経済に与える影響が見えてきます。中国には農村戸籍という自由を制限された制度があります。農村戸籍を持っている以上は、かつて中国が製造業を発展させるために都市住民に与えた特権的な分配制度の恩恵にあずかれません。しかし、改革開放以来の中国の経済成長は、農村戸籍を持つ労働者をふんだんに供給して調整弁として使ってきたからこそ、実現したものなのです。

 中国の人口ボーナス期は2030年代には終わります。また、発展する中国が全人口の約7割を占める農村戸籍の人に福祉を提供せずにやっていけるはずはありません。00年代に入ってようやく胡錦濤(フー・ジンタオ)政権が農村戸籍の人びとに対する医療保険や年金制度づくりに踏み出しました。今後は賃金が上昇し、移民の導入さえ考えなければならない時期が来るでしょう。

日経ビジネス2020年3月2日号 89ページより目次