全1490文字
『高倉健ラストインタヴューズ』
野地秩嘉著
1600円(プレジデント社)

2014年に亡くなった名優の取材音源を書籍化。富山刑務所への慰問講演、演技や影響を受けた出来事を語る。

 生前から「生きる伝説」だった高倉健。死後はいよいよ伝説となり、今でも「健さん」を追想する本が次々と出ている。『高倉健ラストインタヴューズ』は本人の言葉に加えて、近しい関係にあった人々の記憶を収める。

 孤独で静かなたたずまいの中に漲(みなぎ)る気迫。高倉健は海外でも日本の顔だった。主演作の『君よ憤怒の河を渉れ』が中国全土で大ヒットした1970年代、中国の映画界では「高倉健モデル演技」がはやり、誰もが寡黙で孤独を募らせた演技をしたという。チャン・イーモウ(アジアを代表する中国の映画監督)の回想。「私自身、高倉健さんの真似をして、日常生活でもあまりしゃべらないようにしていました。洋服、髪形も真似ました。コートの襟を立てて歩き、人とあまりしゃべらないようにしていました」。どこの国でもみんな同じことをやるのが面白い。

 最後の主演作『あなたへ』のロケをした富山刑務所に高倉本人が慰問に行き、挨拶をしている。「これから見ていただく映画『あなたへ』は、人を想うということの大切さを描いたものです。そして、人を想うということは、切なさにもつながることなのではないかと思います。(中略)エー自分は、日本の俳優では、いちばん多く、皆さんのようなユニフォームを着た役をやった俳優だと思っております。皆さんが一日も早く……、皆さんにとって、アナタにとって、大切な人のところへ帰ってあげてください。心から祈っています」。気合を入れて振り絞るように出てくる言葉。ユニフォームのくだりではうなるような拍手が巻き起こったという。相手に真剣に構え、共感する。人間という存在に対して、非常に敏感で繊細な人だった。