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 痴漢を問題視すると、でも、痴漢冤罪も怖い、との話に移行する。痴漢がなくなれば痴漢冤罪もなくなるのだから、まず痴漢を問題視すべきだ。それなのに、いや、痴漢冤罪が……と続く。「痴漢は犯罪です」というポスターはあっても、「殺人は犯罪です」というポスターはない。つまり、「たかが痴漢」と軽視されてきた。

 牧野雅子『痴漢とはなにか』は、戦後から現在に至るまでの雑誌・新聞記事などを分析し、痴漢が「カルチャー」として受容されてきたこの社会の愚鈍さをあぶり出す。男の「性欲が強い状態」は、時に裁判のプロセスの中でさえ普遍的なものとして捉えられ、同意に基づく性行為と、そうではない性暴力が同時に語られてきた。

今週の一冊
痴漢とはなにか
牧野雅子著
2400円(エトセトラブックス)

痴漢が社会の中でどのように捉えられてきたか、データや報道などを分析し冤罪や女性専用車両の意味を考える。