突然家に転がり込んできた自称『ニューズウィーク』記者。日常が急ピッチで異世界へと展開していく速度に追いつけず、はあはあ息を切らせながら状況に適応していく主人公、阿部和重。なぜか作者と同じ名前である主人公は、川上さんというこれまた作者の妻と同じ名前の、才能ある妻を持っているようです。

阿部和重著
2400円(文藝春秋)
著者の出身地である山形県の町を舞台に、20年をかけて紡がれた壮大なトリロジー(3部作)の完結編。
突拍子もない難事に巻き込まれた彼がつい考えてしまう「余計なこと」は日常のさまざまや私たちのよく知る文化を軽妙にとりこんでいて、読者はしだいに感情移入してしまう。アヤメメソッドという技を駆使して人々の記憶や行動を操ることができる菖蒲家の一族が企んでいるらしい核テロを未然に防ぐために、CIA(米中央情報局)のオフィサーや、彼らに巻き込まれてしまった主人公が奇想天外な活躍を繰り広げます。
面白いのは、この本で多用されている新聞記事は、実際に報道されたものの引用であること。オバマ政権時代のニュースのあれこれを織り交ぜながら、他方では奇想天外に思えるような事態が展開していくのです。
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