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「井上陽水デビュー50周年」と帯にうたわれています。ロバート・キャンベル『井上陽水英訳詞集』は、この希代のミュージシャンの作品から代表的な50曲を厳選し、日本語原文と英訳の両方を並べた対訳詞集を後半に収めます。前半では、著者と井上陽水とのスリリングな対話をはさみながら、どのようにして英訳がつくられたのか、その「苦心」のプロセスが詳述されます。

今週の一冊
井上陽水英訳詞集
ロバート・キャンベル著
2700円(講談社)

「傘がない」「夢の中へ」「ダンスはうまく踊れない」「いっそセレナーデ」。英訳を通じて陽水の世界の深層が解明される!

 井上陽水の歌詞は決して分かりやすいものではありません。主語が省かれていたり、時制が示されなかったり、曖昧な「余白」がたっぷりあります。それを想像力で補って、聴く人が自らの色に染めながら、陽水の歌になじみ、親しんでいくところが独特の魅力です。

 著者は米国出身の日本文学研究者で、江戸時代の古典を専門にしています。その人がなぜ井上陽水を? という意外の感もありますが、この出会いのドラマもまた感動的です。

 <陽水さんの歌の匂いのいちばんのエッセンスは、もしかしたら日本語という空間から一歩出て初めて感得することができるものなのではないかと思うのです。>

 陽水ファンはむろんのこと、日本人の心性、精神性に関心のある人は、要チェック! 「Jブンガク」へのこれ以上ないチチェローネ(案内)です。