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 政治家が問題発言をし、批判が集中すると、本人が「そういうつもりで言ったのではない」「真意は違う」と述べ、支援者は「マスコミが一部を切り取って報道した」と怒る。数日後、「誤解を与えたとしたらおわびします」というお決まりの文句が放たれて、話題にならなくなるのを待つ。

 この一連の動きを毎週のように見かけるようになった。政治家自身の真意などどうでもいいのだ。彼らは言葉を用いて、有権者に考えを伝える職業なのだから、その言葉の使い方を誤ったのならば、それは単に、実力が不足しているのである。

 昨年、「ご飯論法」(「朝ご飯は食べたか」→「ご飯は食べてません(パンは食べたけど)」というような、政治家特有のかわしかた)という言葉をはやらせた上西充子による『呪いの言葉の解きかた』は、政治の世界だけではなく、労働環境やジェンダーについての「呪いの言葉」を引っ張り出す。受け手を思考停止させ、反論を無効化させる言葉に向かうすべを教えてくれる。

今週の一冊
『呪いの言葉の解きかた』
上西充子著 1600円(晶文社)

「嫌なら辞めれば」「母親なんだから」──。当たり前に語られる言葉は考え方や行動を縛る。言葉の力を考える一冊。

 高度プロフェッショナル制度は、NHKのニュースなどでは「時間ではなく成果で評価する」制度と紹介されたが、労働者個人の懸念を言語化すれば「定額で働かせ放題」である。行使する側が、言葉を巧みに変換する。ならば、それを差し戻す必要がある。