ロンドンのカフェでその新聞記事を見た瞬間、著者は「ドキンとするほどの衝撃」を受けます。〈中世ラテン語辞書作成プロジェクト 101年ぶりに完了〉。その時著者は、新聞社の欧州総局長として当地に赴任していました。『100年かけてやる仕事──中世ラテン語の辞書を編む』はこうして端緒をつかみます。
今週の一冊
『100年かけてやる仕事――中世ラテン語の辞書を編む』
小倉孝保著 1800円(プレジデント社)

言葉を次世代につないでいくとはどういうことか。時間をかけ、手間を惜しまず、人と協力しながら耕していく文化の土壌。
心を揺さぶられた理由は、分からなくもありません。誰が、いったい誰のために、100年もの時間をかけて、採算も市場性も度外視したとしか思えないプロジェクトを考えついたのか? 中世ラテン語という、英国の古文献の中に残る言葉を採取して、意味や用例を確認し、辞書をつくる仕事です。関わった人たちにはワードハンター(言語採集者)と呼ばれるボランティア市民がたくさんいました。いったい何が楽しくて、無報酬で自分の時間を削ってまで、後世のためにこつこつ言葉を集めたのか? 自分が生きて完成を見届けられないかもしれないのに……。
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