米テスラのイーロン・マスク、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス、米マイクロソフトのビル・ゲイツ。世界一の富豪になったイノベーターたちが読んだ本のエッセンスを紹介する書籍からの連載最終回。傑出した天才たちに「性格に問題がある人物が多い」という印象がつきまとう理由とは。

ツイッターの買収騒動で批判を浴びたイーロン・マスク(写真=ロイター)
ツイッターの買収騒動で批判を浴びたイーロン・マスク(写真=ロイター)

 テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクに対する批判が高まっています。「買収したツイッターの従業員をいじめている」「自分を批判したジャーナリストのツイッターアカウントを凍結するような姿勢は許せない」……。米ツイッター買収とその後の容赦ないリストラ、周囲があきれるような言動を受けて、マスクの人柄には問題があるという声が目立つようになりました。

 書籍『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』によると、ジェフ・ベゾスもアマゾン社内で「ナッター(狂気)」と呼ばれており、部下を激しく叱責することで知られていました。仕事に激しい情熱を燃やす一方で、「君は無能なのか?」「そんなアイデアを出すなら首をくくらなきゃいけないな」と社員を叱るような非常に厳しい一面を持っていたそうです。

部下を厳しく叱責することで知られるジェフ・ベゾス(写真=ロイター)
部下を厳しく叱責することで知られるジェフ・ベゾス(写真=ロイター)

 「天才はいつも私たちをがっかりさせてくれる。少なくとも人としては。ただ、その非は私たちの側にある。天才の基準は、その功績であって、人格でないことを私たちは忘れている。功績とモラルは別物になる可能性があることを私たちは見落としている」。『イェール大学人気講義 天才~その「隠れた習慣」を解き明かす』の著者で、同大学で天才に関する講義を担当してきたクレイグ・ライトはこう述べています。

 天才の功績と人格は切り離して考えるべきだ、というのがライトの主張です。マスクの性格に問題があったとしても、テスラがEV(電気自動車)で起こしたイノベーションや、米スペースXで再利用可能な宇宙ロケットを実現した実績が色あせることはありません。ベゾスが率いたアマゾンが小売りの世界を激変させたことに異論を唱える人もまずいないでしょう。

 傑出した天才たちの人柄にはどのような共通点があるのでしょうか?

 自分勝手で周囲のことをあまり考えない、性格に問題がある人物が多いという印象は確かに否めません。

 例えば、「Macintosh(マッキントッシュ)」から「iPod」「iPhone」まで数々の革新的な商品を生み出してきた米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ。イノベーションを持続的に生み出す究極のアイコン(偶像)になったジョブズも、性格的にはかなり問題が多い人物だったと言えるでしょう。

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