京セラ創業者の稲盛和夫氏が自身の言葉で「経営12カ条」を解説する本連載。第5条では、高収益企業の大原則が「売上最大、経費最小」にあると説く。「アメーバ経営」の仕組みはそれを実現するために生まれた。

(写真=PIXTA)
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 京セラを創業したとき、私は経営の経験や知識を持たず、企業会計についても何も知りませんでした。そのため、支援をしてくださった会社の経理課長に、経理の実務を見ていただいていました。そして、月末になると、その人をつかまえては「今月の収支はどうでしたか」と聞くのですが、経理の専門用語を多用されると、技術系出身の私には難しくてよくわかりません。

 たまりかねた私は、「とにかく売上から経費を引いた残りが利益なんですね。ならば、売上を最大にして、経費を最小にすればいいのですね」と彼に言い放ったのです。

 おそらく経理の方は、あきれかえっておられただろうと思います。しかし、それ以来、今日まで、私はこの「売上最大、経費最小」を経営の大原則としてきました。非常にシンプルな原則ですが、この原則をただひたすら貫くことで、京セラは素晴らしい高収益体質の企業となることができたのです。

 皆さんは経営の常識として、売上を増やせば経費もそれに従って増えていくものだと考えていると思います。しかし、そうではありません。「売上を増やせば経費も増える」という誤った「常識」にとらわれることなく、売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑えていくための創意工夫を徹底的に続けていくことが大切です。そうした姿勢が高収益を生み出すのです。

 たとえば、現在の売上を100として、そのための人材と製造設備を持っているとします。そして、受注が150まで増えたとすると、一般には、5割増の人員と5割増の設備で150の生産をこなそうとします。

 このような「足し算式の経営」は、絶対にしてはなりません。受注が150まで増えたら、生産性を高めて、本来なら5割増やしたい人員を2割増あるいは3割増に抑えるのです。そうすることで、高収益の企業体質を実現することができます。受注が増え、売上が拡大する会社発展期こそ、徹底した経営の筋肉質化を図り、高収益企業とする千載一遇のチャンスなのです。

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