できたばかりの会社で人材に余裕がなく、入社後すぐに現場に配属し、ようやく戦力として活躍しはじめてくれた者たちだっただけに、本当のところ、辞められてしまえば困ります。しかし私は、「彼らが要求に固執するようなら、やむを得ない。創業の時点に戻ってやり直せばいい」と腹をくくり、「要求は受けられない」と答えました。

 会社を始めてまだ3年です。私自身、会社の前途に対して確信らしいものは何も持っていません。「とにかく必死に努力をしていけば何とかなるだろう」という程度でしか、会社の将来を描くことができませんでした。ですから、彼らを当面引きとめるために、できる自信も見込みもないことを保証するのは嘘をつくことになる。私には到底できないことでした。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1336文字 / 全文3031文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「稲盛和夫の経営12カ条」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。