誰でも年齢を重ねると記憶力が低下したり、素早い判断ができなくなってきたりするもの。だが年を取って脳が老化すると、本当にだまされやすくなるのか。公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんに聞いた。

(写真=PIXTA)
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「だまされやすさ」について教えてください。ニュースなどで特殊詐欺の被害に遭った人のエピソードに接すると「ええっ、どうして疑わなかったの?」と思う一方、「いや、自分だってその場になればどうなるか分からない」と不安になったりもします。年齢とともに脳の判断力も衰えてくるわけですから、やはりだまされやすくなってしまうものなのでしょうか。

脳内のメモ帳には限界がある

篠原さん:まず、脳の特性から考えると、高齢者であることを抜きにしても、「そもそも人の脳は、複数のことを同時並行処理できない」ということが前提となります。

 人を人たらしめているのは、脳の「前頭前野」という部分。知覚・言語・思考など知性をつかさどる部分です。

 前頭前野は、脳の別の場所に格納されている記憶や情報を意識に上げてきて、何かのミッションがあるとその都度あれこれ検討します。この機能があるからこそ、人類はどんな状況に置かれても柔軟に適応し、あらゆる環境下で生き抜いてきました。

 このように優れた働きをする前頭前野ですが、ここはコンピューターのキャッシュメモリーのように必要な情報を一時的に保存して情報処理をするところ。実は、その性能には限界があるのです。

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