心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患の治療経験者にとっては、再発防止は重要な関心事だ。効果的とされるのが、オリーブオイルや魚介を多くとる「地中海食」と脂肪分の摂取を抑える「低脂肪食」。どちらの食事がより効果的なのか。スペインの大学病院が実際に比較実験を行った。

オリーブオイルや魚介類を多く摂取する地中海食が、心血管疾患の再発防止に有効(写真=PIXTA)
オリーブオイルや魚介類を多く摂取する地中海食が、心血管疾患の再発防止に有効(写真=PIXTA)

 狭心症や心筋梗塞などの再発予防には、「地中海食」のほうが「低脂肪食」よりも効果が高いことが、スペインで行われた大規模無作為化試験*1で明らかになりました。7年間の追跡で、地中海食を続けた人たちの再発リスクは、低脂肪食の人たちの4分の3以下に抑えられていました。

7年間の追跡研究

 心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を発症して治療を受けた人は、再発リスクを減らすために、動脈硬化の進行を抑えて血栓形成を予防しなければなりません。具体的には、心血管疾患の危険因子である高血圧、高血糖、脂質異常症に対する治療薬を処方されたり、禁煙、減量といった生活改善を指示されたりします。では、食事はどのようなものが好ましいのでしょうか。

 心血管疾患の発症予防には、低脂肪食(脂肪の摂取量を抑えた食事)と地中海食(オリーブオイルや魚介類などを多く摂取する食事)のどちらも好ましい食事法として知られています。しかし、心血管疾患の「再発予防」における効果を調べた、大規模で質の高い研究はありませんでした。そこでスペインの研究者たちは、長期にわたる無作為化試験を行って、これら2つの食事法の再発予防効果を比較することにしました。

 スペインの大学病院で、冠動脈疾患(心筋梗塞または狭心症)の経験がある20~75歳の患者で、過去6カ月間は冠動脈疾患関連の症状を経験しておらず、他に重症の疾患を持たない人を登録して、地中海食または低脂肪食に割り付けて7年間追跡しました。

 食事の内容に関する栄養士の指導は、6カ月ごとの対面と2カ月ごとの電話で行い、3カ月に1回はグループセッションも行いました。

 地中海食は、脂質からのエネルギー摂取を総エネルギー摂取量の35%以上(一価不飽和脂肪酸が22%、多価不飽和脂肪酸が6%、飽和脂肪酸からの摂取は10%未満)とし、たんぱく質からのエネルギー摂取は15%、炭水化物からのエネルギー摂取は50%以下としました*2

 低脂肪食は、脂質からのエネルギー摂取を全体の30%未満(一価不飽和脂肪酸が12~14%、多価不飽和脂肪酸が6~8%、飽和脂肪酸が10%未満)とし、たんぱく質からのエネルギー摂取は15%、炭水化物からのエネルギー摂取は55%以上としました。

 どちらもコレステロールの摂取量は1日あたり300mg未満になるよう調整しました。また、エネルギー摂取量には制限は設けず、運動の推奨は行いませんでした。

 それぞれ摂取を推奨する食品にも違いがあり、例えば、地中海食ではバターやマーガリンの摂取は認めず、ワインについては、日常的に飲酒している人に対して、女性は1日にグラス1杯、男性は1日にグラス2杯まで認めました。一方低脂肪食では、バターやマーガリンは週に1皿以下とし、ワインの摂取は認めない、としました。

 それぞれの食事法に対する遵守率(食事法に関する指示にどの程度従うことができていたかどうか)は、0~14ポイント制のMediterranean Diet Adherence Screener(MEDAS)と0~9ポイント制の低脂肪食遵守度調査を用いて、年1回評価しました。いずれの評価指標も、高スコアほど遵守度が高いことを意味します。

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