兄を討つための軍事費を声高に要求せねばならない娘婿の胸中を思うとやるせない。従道自身は征韓論に与(くみ)することはなかったが、兄と不仲で東京にとどまったわけではない。西郷が征韓論で大久保と決裂して帰郷する際、「あとんこつは頼んど」と託され政府に残っただけである。変わらず兄を敬い、身を案じる従道の心情は清子を通じて伝わっていた。

 「明治通宝の原版を出してすぐに印刷の準備に取りかかれ。よいか、一刻も無駄にするな」

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