ドイツから輸入した一連の紙幣製造設備の試運転もひととおり終え、職工たちも操作方法に馴染(なじ)み始めた3月初め、いつになく厳しい表情のキヨッソーネが得能の執務室に現れた。キヨッソーネが早口でまくしたてるのを、成瀬が一呼吸おいて通訳していく。
「紙幣寮では、得能閣下の号令のもと、紙幣国産化に向けて着々と準備が進みつつあり、喜ばしく存じます……用紙については心配でなりません……民間の製紙会社がつくる紙は、お札の用紙として使える水準に達していないからです」
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