現在の大蔵卿である大隈重信は明治3年に得能が任官された際の大蔵大輔(たいふ)(今の事務次官)で、仕事上直々に指導を受けた間柄である。得能は組織上部下ではあるが、大隈の一回り以上も年輩であり、頑固一徹を貫く得能には大隈も一目置いているところがあった。

 大蔵卿への面会を申し込んだ得能は、多忙な大隈の時間が空くまで待ち続けるつもりだ。お付きの者たちは眉を顰(ひそ)めるが、省内で最年長の得能が渋面で腕組みして控えの間に座っていると、出直してくれとはなかなか言い出せない。

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