現在の大蔵卿である大隈重信は明治3年に得能が任官された際の大蔵大輔(たいふ)(今の事務次官)で、仕事上直々に指導を受けた間柄である。得能は組織上部下ではあるが、大隈の一回り以上も年輩であり、頑固一徹を貫く得能には大隈も一目置いているところがあった。
大蔵卿への面会を申し込んだ得能は、多忙な大隈の時間が空くまで待ち続けるつもりだ。お付きの者たちは眉を顰(ひそ)めるが、省内で最年長の得能が渋面で腕組みして控えの間に座っていると、出直してくれとはなかなか言い出せない。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り4031文字 / 全文5411文字
-
有料会員(月額プラン)は初月無料!
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員になると…
特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題
ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題
日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題
この記事はシリーズ「小説 国産紙幣誕生」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?