在野の医師たちによって新型コロナ感染症の重症化因子を探るタスクフォースが立ち上がった。全国の医師たちが連携して5000人の患者から検体を収集。遺伝子と症状の相関を探り、「ファクターX」の一端が明らかになりつつある。
米ニューヨークにあるビュッフェの設けられたオフィスの一室、2006年。みずほコーポレート銀行(当時)の飯田浩一は、やや緊張した面持ちで朝食を口に運んでいた。向かいに座るのは、米投資銀行エバーコア・パートナーズを立ち上げたロジャー・アルトマン。クリントン米政権で財務副長官を務めたこともある、米政財界に太いパイプを持つ人物だ。みずほフィナンシャルグループはエバーコアへの出資を検討し、飯田はアルトマンの理念と哲学を知る必要があった。
ひとしきり会話が進んだのちに、ふと思い立って尋ねた。
「これから、あなたは何を重視していくのか」
何気なく尋ねたこの問いに対し、ベーグルを頬張っていたアルトマンの答えは、飯田の思いを言い当てるようでもあり、その後も、その心に反響し続けることになる。
「目には見えないインテレクチュアル・キャピタル(知的資本)だよ」
金融資本主義の震源地・ウォール街の住人であり、市場原理や短期的な株主利益中心主義の権化のように思っていたアルトマンの口から出たとは思えない言葉だった。
14年後の20年5月、飯田は一人の男からの電話で、ニューヨークの朝食の光景を鮮明に思い起こした。電話の相手は30年来の友人であり「コロナ制圧タスクフォース」発起人の一人でもあるイーパーセル(東京・千代田)社長の北野譲治だった。
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