「米国を再び偉大に」と信じ続ける層と、エリート層の分断が深くなる一方の米国社会。多くの知識層が見過ごしてきた深刻な事実を、ノーベル賞経済学者アンガス・ディートン教授が指摘する。
米プリンストン大学公共国際問題大学院名誉教授

現在、米国の論壇では、民主主義がトランプ前大統領のスローガン「MAGA(マガ)=Make America Great Again(米国を再び偉大に)」の狂信者、選挙否定論者、そして都合の悪い結果は無視すると脅す共和党員(彼らは選挙および政治の世論調査の監視に、忠誠心の強い者を雇う)に脅かされているとの読み筋が支配的である。
だがこのストーリーは、真実のほんの一断面でしかない。はるかに長い間語られ続けてきた別のストーリーがあり、そこには別の悪人たちが登場する。それは、過去50年以上にわたり、大学を卒業していない米国人の生活が物質的・健康的・社会的な成果の範囲において悪化してきたというものだ。
米国の成人人口の3分の2は4年制大学を卒業していないが、政治は彼らのニーズに応えるどころか、企業の利益や高学歴の米国人を優先し、むしろ害になる政策を頻繁に打ち出した。大学を卒業していない米国人から「盗まれた」のは選挙ではなく政治の意思決定に参加する権利、つまり民主主義が保証するはずの権利だ。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り2589文字 / 全文3335文字
-
【締切迫る!】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【初割・2カ月無料】有料会員の全サービス使い放題…
特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題
ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題
日経ビジネス最新号、11年分のバックナンバーが読み放題
この記事はシリーズ「グローバルインテリジェンス」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?