中国で元気な企業は顧客、競合他社、そして最前線の従業員を使って多くのイノベーション(技術革新)を生み出す。研究開発(R&D)活動の中央集権化が進む世界の趨勢に反する、中国流の市場主導型イノベーションに迫る。

ニール・C・トンプソン[Neil C. Thompson]
米マサチューセッツ工科大学研究科学者
米カリフォルニア大学バークレー校で経営と公共政策の博士号(Ph.D.)取得。コンピューター科学や統計学の修士号も持つ。国連や世界銀行での実務経験を経て、現在は米マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピューター科学・人工知能研究所でコンピューターの進歩の経済的・技術的基盤を研究するプロジェクトチームを率いる。
ディディエ・ボンネット[Didier Bonnet]
スイスIMD教授
英オックスフォード大学で博士号(Ph.D.)取得後、大手コンサルティング会社での勤務などを経て、現在はスイスのビジネススクールIMDにて戦略とイノベーションの教授。デジタル戦略、DX(デジタルトランスフォーメーション)などを専門とし、30年以上にわたってメディア企業や通信会社など大手企業に対する戦略提言を行ってきた。
マーク・J・グリーブン[Mark J. Greeven]
スイスIMD教授
ウェンジン・リュウ[Wenjing Lyu]
米マサチューセッツ工科大学博士研究員
サラ・ジャバラ[Sarah Jaballah]
仏キャップジェミニ・インベントのマネージン グコンサルタント

 米ニューヨークや英ロンドン、東京の店舗で売られているフィリップス(オランダのヘルスケア大手)の電気シェーバーは、どれも似ている。しかし中国では、上海市でも山東省煙台市のような小さな都市でも、他の国とは全く異なる製品が並ぶ。

 これらの製品は現地でのイノベーションによって中国の消費者向けにカスタマイズされている。ただし、驚くべきことに、フィリップスは中国以外の主要国ではこのような特定市場のためのイノベーションの必要性を感じておらず、こうした手法を中国でのみ採用している。なぜか。

 我々は3年間にわたり、企業のイノベーションに関する2つの大規模な調査を実施した。1つ目は、先進国を中心とした8カ国におけるイノベーションの実践を調査したものだ。もう一つは、中国におけるイノベーションの実践に注目し、国内・外資系企業の両方を対象にした。

 調査から分かったのは、中国におけるイノベーションの在り方は、国内企業であれ外資系企業であれ、他地域とは異なるということだった。

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