この記事は日経ビジネス電子版に『「娘たちよ、休校で新型コロナウイルスの患者は減らなかったよ」』(11月4日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』11月29日号に掲載するものです。

新型コロナウイルスの感染拡大で、真っ先に実施された全国の学校の休校。福元健太郎・学習院大学法学部教授らの分析によると、休校には新規感染の抑制効果は見られなかった。

福元 健太郎[Kentaro Fukumoto]
学習院大学法学部政治学科教授
1972年生まれ。95年東京大学法学部卒業、同助手などを経て2007年から現職。博士(法学、東京大学)。その間、米ハーバード大学及び米セントルイス・ワシントン大学で客員研究員。専門は政治学、特に政治分析方法論(政治現象の統計分析)。著書は、『日本の国会政治 全政府立法の分析』(東京大学出版会、2000年)、『立法の制度と過程』(木鐸社、2007年)。American Political Science Review、 Journal of the American Statistical Association、 Political Analysisなどの学会誌に論文を発表している。Japanese Journal of Political Science誌の編集者、Political Analysis誌の編集委員も務める。

 安倍晋三政権時、新型コロナウイルス下で真っ先に下された決断が学校の休校だった。その効果についてきちんと検証しないまま、市民は冬に懸念される第6波の襲来やインフルエンザの感染拡大に対する備えを迫られている。

 あの休校は本当に意味があったのか? 2人の子を持つ親としてそう疑問に思った学習院大学法学部政治学科の福元健太郎教授が、子どもたちに休校の意味を説明したいとの思いから実証研究に取り組んだところ、共同研究の成果が国際的な医学学術誌「Nature Medicine」に掲載された。福元教授は研究内容について、「娘への手紙」というスタイルで日経ビジネスに寄稿した。国内のデータに基づく福元教授の分析では、休校による新型コロナウイルス患者の減少は見られなかったのである。

 緊急事態宣言が解除され、ようやく少しずつだけれど暮らしが元に戻りつつあるね。思えば、新型コロナウイルスの怖さを強く感じたのは、2020年3月に突然休校になった時だ。

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