地球環境保護に関心が高まる一方、サステナビリティー(持続可能性)をうたう再生品はあまり支持されないのが現実だ。だが、新品ではない製品がたどってきた「ストーリー」を伝えることが、製品に新たな価値を生むことが分かった。

バーナディット・カムライナー[Bernadette Kamleitner]
オーストリア・ウィーン経済経営大学教授
コンサルタントを経て心理学とビジネス研究の博士号(Ph.D.)を取得。オーストリア、英国の大学を経て2012年から現職。
カリナ・スリドル[Carina Thürridl]
オーストリア・ウィーン経済経営大学助教授
オーストリア・ウィーン経済経営大学で博士号(Ph.D.)取得、2019年から現職。消費者行動とサステナビリティー、消費者のウェルビーイングを研究。

 ゴミを新たな製品に変えるリサイクルは、持続可能な素材の活用方法だ。しかし、自転車のインナーチューブから作られたバッグ、廃船から作られたテーブル、使用済みの蚊帳から作られたノートパソコンのスリーブなど、過去に製品として使用された痕跡が目に見えるアップサイクル商品(捨てられるはずだったものに新たな価値を加えて作られた新商品)というマーケティングは難しい可能性がある。

 過去に製品として使用された痕跡を目にすることで、再利用の過程でエネルギー消費を最小限に抑えることができる、サステナブルな製品であることが分かるかもしれない。しかし、製品・素材の再利用は生産上の特殊な課題があり、一般的に低コストとは言えない。ゴミから作られた製品に高いお金を払うくらいなら、新しい製品にお金を使いたいという消費者が多いのが現状だ。

 新品と比較する顧客に新品ではなくリサイクル製品を選んでもらうには、どうすればいいだろうか。確かに、一部の人々は、最も環境に優しい商品を探し求め、それらにより高いお金を払っても構わないと思っている。

 だが、筆者らが携わった最初の調査によると、多くの消費者はそれほどリサイクル製品の購入に積極的ではないことが分かった。実際、製品のサステナブルな側面を強調することで、明らかに需要が減ってしまうという調査結果もある。

 そこで私たちは、使用済みで廃棄される素材につきまとう悪いイメージを払拭し、リサイクル製品をより多くの消費者に受け入れてもらう方法を検討した。その中でも、廃棄物から作られた製品であるにもかかわらず、人々が再利用された製品を選ぶ際に、特別な感情を抱くようにするにはどうしたらよいかに焦点を当てた。

 そして、ストーリーに対する人間の親和性を利用することにメリットがあるという、重要な洞察を得た。ゴミの山から生まれ、新しい製品に生まれ変わるまでのリサイクル製品が持っているストーリーを消費者に伝えるのだ。そのことで、その製品がユニークで特別な、独自の歴史を持つものとして認識されるようになり、価値が高まることが明らかになったのである。

消費者をストーリーテラーに

 人間は、ストーリーというものに対してとても親和性が高い。 実際に、ストーリーは、情報に意味を持たせるのに最適な手段であり、人々は至る所にストーリーを求める。マーケティング担当者は、この親和性を長い間認識し、活用してきた。しかし、一般的な手法は、ブランドを主役に据えたストーリーを作り、ブランドに対するある種の感情を呼び起こすものであり、私たちが直面している問題には適していないように思われる。