新型コロナウイルスの感染拡大以降、上司と部下が対面する機会が減り、部下に感謝や評価を伝える機会が減った。社員に敬意を示し、「会社から認められている」と感じられるために、管理職は何をすればいいのだろうか。

クリスティー・ロジャース[Kristie Rogers]
米マーケット大学経営管理学部准教授
米アリゾナ州立大学で博士号(Ph.D.)取得。ビジネス交渉などを教える。米カンザス大学助教授を経て2016年から現職。
べス・シノフ[Beth Schinoff]
米ボストン・カレッジ経営大学院助教授
米アリゾナ州立大学で博士号(Ph.D.)取得。職務を超えた従業員同士のつながり方などを研究。組織論が専門。

 リモートワークやハイブリッドワークが一般的になり、働き方が変化している今、リーダーたちは社員に(大事な人材として)尊重(リスペクト)していることをどう伝えられるだろうか? これは社員の最大の関心事だ。米ピュー・リサーチ・センター最近の調査では、過去1年間に仕事を辞めた社員の最大の要因は、「低賃金」「昇進の機会の少なさ」に次いで、「尊重の欠如」だった。

 社員は、自分が大事にされていないと感じるときに会社を去る。この問題に対応できるかどうかは管理職の力量にかかる。尊重、職場での人間関係、そしてバーチャルワークの研究者である筆者たちは、職場における尊重の意識がこれまで以上に求められていると理解している。

 だが皮肉なことに、研究対象となる尊重を示す行為は主として(実際に会う)対面コミュニケーションで成り立っているため、リモートワークの社員に管理職が効果的にそれを伝える方法は見つけにくい。

 管理職が示すべきだとされる(尊重の)サインの多くは、フランクな場でさりげなく交わされるもので、周囲の人々に伝わることが多い。これら全ての条件は、バーチャルで再現が困難だ。本記事では、職場における尊重とリモートワークの関係性に焦点を当てた我々の研究結果に触れつつ、このテーマにまつわる幅広い文献や実例、我々が実施した定性的な自由記述式アンケートから得られた知見を紹介する。

 リモートワークへの移行に伴い社員が求める「尊重」の意味が変化したわけではない一方、多くの管理職はより効果的で異なるアプローチを求められていることが分かる。

新型コロナ禍の変化

リモート下でも部下の承認欲求を満たせるか(写真=PIXTA)
リモート下でも部下の承認欲求を満たせるか(写真=PIXTA)

 オフィスへの出社でも自宅のリモートワークでも、誰もが大事にされたいと感じるのは特段驚くべきことではない。研究結果も、社員が社員として、あるいは一人の人間として、お互いの価値を認め合うことの重要性を示している。尊重されていると感じる社員は良いパフォーマンスを発揮でき、より高い幸福感を抱く。一方、感じられない社員は、仕事を嫌い、退社するリスクが高くなる。

 研究からは、尊重には2つのタイプがあることが分かった。価値ある社員としての当然受けるべき最低限の尊重と、期待通り、あるいは期待を上回る結果を出したときに得られる尊重だ。2つは人間の基本的な欲求に根差し、今も昔も変わらない。

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