この記事は日経ビジネス電子版に『世界的にも短い日本人の睡眠、生産性の低さの原因に』(9月29日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』10月18日号に掲載するものです。
人々の生活の質を改善する睡眠のあり方を模索すべきとする、「スリープヘルス」という概念が注目されている。健康経営が生産性にもたらしうる効果が、実証研究により分かってきた。
早稲田大学 教育・総合科学学術院教授

早稲田大学 政治経済学術院教授

近年、不眠症などの「病気の状態」を治癒するだけでなく、人々の生活の質を改善する睡眠のあり方を模索すべきだとする「スリープヘルス」という概念が注目されるようになってきた。筆者らは経済産業研究所のプロジェクトで、睡眠改善施策の効果検証に取り組んできた。本稿では、そこから得られた知見を紹介したい。
現代社会において、睡眠に何らかの問題を抱えている人はかなりの割合に上る。例えば、「国民生活基礎調査」(2019年、厚生労働省)によれば、日本人成人の約3割が「睡眠によって休養がとれていない」と述べており、米国の調査でも44%の人が「睡眠の問題をほぼ毎日感じている」と答えていた(Sleep Foundation、2008)。他国でも同様の傾向が認められ、「睡眠未充足」と呼ばれる状態は世界的な問題となっている。
睡眠が十分でないことによって生産性が低下するとすれば、経済的に大きな損失となり得る。しかし、多くの睡眠未充足者は、ぐっすりと眠れなくても仕方がないと捉え、慢性的にその状態を受け入れているのではないか。こうした中、近年「スリープヘルス」(Buysee、2014)という概念が注目されるようになってきた。
スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠のあり方を模索していくべきとする考えだ。
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