この記事は日経ビジネス電子版に『「ジョブ型雇用はキラキラしてカッコいい」の大きな誤解』(9月22日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』10月11日号に掲載するものです。

昨年来、ジョブ型雇用がにわかに注目を集めているが、そこには大きな誤解がある。ジョブ型は「カッコいい」というより、「古臭くて融通が利かない」分業型の制度だ。

鶴 光太郎[Tsuru Kotaro]
慶応義塾大学大学院商学研究科教授
1960年東京生まれ。84年東京大学理学部数学科卒業。英オックスフォード大学 D.Phil.(経済学博士)。経済企画庁調査局内国調査第一課課長補佐、経済協力開発機構(OECD)経済局エコノミスト、日本銀行金融研究所研究員、経済産業研究所上席研究員を経て、2012年から現職。日経スマートワーク経営研究会座長、経済産業研究所プログラムディレクターを兼務。

 昨年来、ジョブ型雇用がにわかに注目を集めている。筆者は政府の規制改革会議雇用ワーキング・グループ座長(2013~16年)として、またさまざまな著作を通じて、いわゆる日本的な雇用システム・労働市場に内在する多くの問題を解決するため、ジョブ型雇用の普及が大きなカギを握ることをこれまでも強調してきた。

誤解が多い「ジョブ型」

 しかし、昨年来の第2次ブームの中では、ジョブ型雇用が誤解されていると感じる場面も多い。その多くは定義に起因している。具体的には、ジョブ型の対義語をメンバーシップ型とするのはよいが、メンバーシップ型を日本的雇用システムの同意語としてしまう誤りである。

 これでは、日本的雇用システムにはない様々な特徴に全てジョブ型のレッテルを貼ることができてしまう。解雇自由しかり、成果主義しかりだ。つまりジョブ型という言葉を使う人によって、いくらでも新しい定義が可能となるのだ。ジョブ型の概念を提示した労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏が示した定義に戻ってみよう。彼は雇用契約に着目し、日本以外の雇用契約(ジョブ契約)には、職務(ジョブ)が具体的に明記されているが、日本の(大企業・正社員)の雇用契約(メンバーシップ契約)は「空白の石版」のごとく職務が明記されず、むしろその会社のメンバーとなる契約であると喝破した。

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