銃撃により死亡というその人生の突然の幕引きが、いまだに内政を揺さぶり続ける、安倍晋三元首相。「元首相の死」という事件に対する世界の受け止め方をどう理解すべきか。公共外交の専門家が寄稿した。
米カリフォルニア州立大学フラトン校コミュニケーション学部名誉教授

世界を震撼(しんかん)させた安倍晋三元首相の銃撃事件。事件当初、国内はもとより、世界に広がる大きな反響に、戸惑いを覚えた日本人も多かったのではないか。安倍元首相の死がもたらした多大な反響の理由を、日本政府でアドバイザーを務めたこともある公共外交・説得の専門家、ナンシー・スノー氏が寄稿で解説した。
米広報文化交流局(United States Information Agency:1999年に米国務省に統合された対外広報機関)に勤務していた92年、筆者は(故・安倍晋太郎元外務大臣の名を冠した)新しい安倍フェローシップ・プログラムの担当者を務めたが、そのころは「アベ」と読めず、リンカーンのファーストネームのように「エーブ」と呼んでいた。それから30年後の2022年、米ニューヨーク州北部にあるウェグマンズというスーパーマーケットのレジ係ですら「あのアベ(首相)はいい人だったね」と哀悼の意を表すのを耳にした。
筆者が「フルブライト米国人招へい講師プログラム」による教授として、また安倍フェローとして日本で過ごした時期は、第2次安倍内閣(12~14年)と重なる。そして銃撃事件が起こった22年7月8日は、国民感情と世界への影響という面で、米国でケネディ大統領が暗殺された1963年11月22日と似ている、と筆者は考える。
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