価値観に基づいたパーパス(存在意義)を明確にし、それに沿った戦略を追求する企業はメリットを得られるという。「パーパス・ストレングス・フレームワーク」や「パーパススコアカード」など、経営ツールも開発されつつある。

アルバロ・レオ・ド・ナルダ[Alvaro Lleo de Nalda]
スペイン・ナバーラ大学准教授
スペイン・バレンシア工科大学で経営学、産業工学、産業組織工学の博士号を取得。米ハーバード大学フェロー研究員、米ベントレー大学客員研究員などを務める。専門は人材マネジメント。米フォード・モーター勤務、人事コンサルタントの経験がある。パーパスの強さを測定するプロジェクトに携わる。専門誌や学会で35以上の論文を発表。
エイミー・C・エドモンドソン[Amy C. Edmondson]
米ハーバード経営大学院教授
米ハーバード大学卒業、1996年に同大学院から組織行動学の博士号(Ph.D.)取得。民間企業のチーフエンジニアなどを経て96年から現職。「心理的安全性」の提唱者として知られる。『恐れのない組織──心理的安全性』(英治出版)はじめ7冊の著書と60以上の学術論文を発表。2021年の経営思想家の世界ランキングThinkers 50で1位。

 パーパス・ドリブン(パーパス駆動型)組織には、どのようなメリットが生まれるのか。2人の経営学者とコンサルティング会社スペインDPMCのアレックス・モンタナ氏、フィル・ソトク氏が解説する。

 価値観に基づいて存在意義(パーパス)を明確にし、それに沿った戦略を追求する企業は、求心力や、従業員のエンゲージメント、顧客のロイヤルティーを向上させ、財務パフォーマンスを改善するなど多くのメリットを享受できる。現代、従業員は企業が地域社会や環境に与える影響に強い関心がある。多くのビジネスリーダーたちが、行動規範(パーパスステートメント)の策定を議題とすることも納得できる。しかし企業が単に行動規範を企業サイトに載せるだけなら大した効果は得られない。

 パーパスは直接の引き金にはならない。筆者たちの研究では、パーパスは、組織全体で共有し行動を促すうえでの強固なコミットメント(約束事)だ。組織のあるべき姿、役割の意味や価値は、すべて共有したコミットメントから降ってくる。人々が仕事のやり方を変えようとするとき、パーパスがものをいう。

 パーパスが組織に変革をもたらし影響を長続きさせるため、リーダーにはパーパスを明確に運用し、測るための持続的なアプローチが必要だ。

 筆者らは過去の研究で、パーパスの明確な定義と発展に不可欠な要素を特定。その後フレームワーク化し、「パーパス・ストレングス・フレームワーク」とした。パーパス活用がどのような行動変容をもたらし、パーパス・ドリブンな組織にどのようなメリットが生まれるのか説明できる。

パーパスに基づく戦略が必要だ
パーパスに基づく戦略が必要だ
●パーパス・ストレングス・フレームワーク

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