近年、「ランサムウエア」の悪質なサイバー攻撃によりシステムがまひさせられる被害が世界で急増している。経営者は、身代金の支払いを受け入れる事態に直面する前に、6つの質問を顧みて備えておこう。

フィリップ・レオ[Philipp Leo]
レオ&マリーサイバーアドバイザリーパートナー兼スイス軍サイバーコマンド大尉
経営コンサルティング、銀行、メディアなどを経験。スイス軍でサイバー専門家候補を指導。データ保護とサイバー犯罪に関する欧州警察機構(ユーロポール)の専門家ネットワークの一員。
オイコー・イシュク[Öykü Işik]
IMDデジタル戦略・サイバーセキュリティー教授
デジタルの強靱な回復力、破壊的な技術が社会や組織にもたらす課題を専門とする。論壇における新進気鋭のリーダー(Thought Leaders)を選ぶThinkers 50 Radar 2022に選出された。
ファビアン・マリー[Fabian Muhly]
レオ&マリーサイバーアドバイザリーパートナー兼スイス・ローザンヌ大学犯罪学研究員
スイス・ローザンヌ大学で犯罪学を研究。サイバーリスクの人的要因や知識を与える革新的な方法を扱う。データ保護とサイバー犯罪に関する欧州警察機構(ユーロポール)の専門家ネットワークの一員。

 近年、「ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)」による悪質なサイバー攻撃による被害が急増している。ランサムウエアは、感染させた機器のデータを暗号化し、解読できなくしてコンピューターシステムを事実上まひさせる。2019年から21年の間に、米国のサイバー攻撃は200%も増加した。被害は甚大で、足をすくわれるリーダーは後を絶たない。攻撃者はファイルを解読して感染したシステムを復元する代わり、被害者にデータの身代金を要求する。

 ランサムウエアの攻撃は1980年代に始まり、2010年以降には犯罪者が決済手段として好む暗号通貨が台頭していることもあり、多くの組織にとってより大きな脅威だ。何よりつらいのは、脅威が不確実性に満ちており、対策を練ることが非常に困難である点だ。多くの組織は結果が確実でないにもかかわらず、経済的な負担も大きい身代金を支払うことで、最も迅速な解決策に走りがちだ。

脅威はどこにあるか分からない(写真=PIXTA)
脅威はどこにあるか分からない(写真=PIXTA)

取り戻したのはわずか8%

 300社を対象とした最近の調査では、64%の組織が過去12カ月以内にランサムウエアの攻撃を受け、そのうちの83%が身代金を支払ったことが明らかになった。しかし身代金を支払った組織のうち、全データを取り戻したのはわずか8%で、63%は約半分しか取り戻せていない。