選挙直前に安倍晋三元首相が暗殺された。事件そのものが、選挙結果に影響を与えた可能性は低い。だが、事件や選挙に関する報道のあり方が、影響を与えた可能性はある。

堀内 勇作[Yusaku Horiuchi]
米ダートマス大学政治学部教授
シンガポール国立大学助教授、オーストラリア国立大学准教授などを経て2016年から現職。1991年慶応義塾大学経済学部卒業。95年米エール大学経済学修士、2001年米マサチューセッツ工科大学(MIT)で政治学博士(Ph.D.)取得。専門は比較政治学、計量政治学。

 2年8カ月ぶりに日本へ一時帰国し、早稲田大学での研究会に出席している最中、安倍晋三元首相が襲撃されるという衝撃的なニュース速報が入った。その数時間後、偶然にも事件に関係する論文を筆者は発表することになった。

 筆者が新しいデータ(後述)に基づき再検証したのは、ラリー・ラウンド・ザ・フラッグ(Rally ’round the flag、「苦境にはせ参じる」)効果、という、1970年にジョン・ミュラー氏が提唱した理論である。戦争やテロ攻撃などの国難時に大統領(あるいは首相)や政権党への支持が高まるというこの理論は、多くの政治学者によって実証的な研究が蓄積されてきた。

 今回の襲撃事件は選挙結果に影響を及ぼしたのであろうか。本稿ではこの問いに対し、データを活用した現代政治学の知見を基に考察したい。また事件に関連した報道に関しても、実験政治学の先行研究を基に論じる。

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