この記事は日経ビジネス電子版に『スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」』(6月14日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』7月4日号に掲載するものです。

「今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は失敗」と断じるノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツ教授。今後は、衰退していくとみられる「グローバリゼーション」をどう管理していくか、議論することが重要だと説く。

ジョセフ・E・スティグリッツ[Joseph E. Stiglitz]
米コロンビア大学教授
1943年米国生まれ。米アマースト大学卒業、67年米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号(Ph.D.)を取得。95~97年米クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、97~2000年、世界銀行のチーフエコノミストを務める。01年にノーベル経済学賞受賞。

 2年以上ぶりに開催された世界経済フォーラム(WEF)は、1995年以来、私が参加してきたこれまでのダボス会議とは明らかに様子が違っていた。それは、1月の明るい雪と晴天から一転、雪がないスキー場と、5月のどんよりとした霧雨に見舞われた気候のせいではない。

 これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億ドルの追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた。

 こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになったのである。

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