この記事は日経ビジネス電子版に『ブレストを創造的にする秘訣は「批判」にあり』(5月20日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』6月20日号に掲載するものです。

アイデアを出し合う会議「ブレーンストーミング」を経験した人は、「決して批判をするな」というルールを知っているだろう。だが近年の研究により、必ずしも批判が悪いわけではないことが分かってきた。

ブレストにおける建設的な批判は、むしろ創造性につながるという(写真=PIXTA)
ブレストにおける建設的な批判は、むしろ創造性につながるという(写真=PIXTA)
ジャレッド・R・カーハン[Jared R. Curhan]
米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院准教授
1993年米ハーバード大学卒業、2001年、米スタンフォード大学で心理学の博士号(Ph.D.)を取得。スタンフォード大学法学部客員准教授などを経て米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院助教授、20年からゴードン・カウフマン教授兼仕事組織研究准教授。全米科学財団の支援で、交渉における主観的価値観の研究を切り開いた。現在は、交渉に主観的価値観項目(SVI)研究がもたらす影響の研究に携わっている。

 複数の人たちとアイデアを出し合う「ブレーンストーミング」の経験がある人なら、「質ではなく、量を重視する」「現実離れで奇抜なアイデアも受け入れる」そして最も重要な「決して批判をするな」という基本的なルールを知っていることだろう。

 これらの原則は、ニューヨークの有名な広告代理店BBDOのマネジャーであるアレックス・オズボーン氏が、1940年代後期に考案したものだ。

 オズボーン氏は、創造性を最大化するためには、ブレーンストーミングは自由奔放であり批判的であってはならないと考えた(実際に複数の研究が彼の意見を裏付けている)。彼は、「創造性は繊細な花のようなものだ。褒められれば花を開かせ、がっかりさせれば芽を摘んでしまう」と述べている。

 しかし、近年の研究ではオズボーン氏の「批判厳禁」のルールに対して疑惑が生じている。否定的な批評であっても創造性と想像力を高め得るとする研究が、増えているのだ。同様に、ブレーンストーミング中にアイデアの質に対する批評を禁止すると、自由な発想と表現を妨げてしまう可能性があるとすら示唆する研究もある。

 果たしてブレーンストーミングにおいて、批判は創造性を促進するのか、それとも妨げるのか。筆者はタチアナ・ラブゾワ氏、アディティ・メヘタ氏と共にこの長く続いてきた論議の解決に挑んだ。そして最近の研究によれば、批判の役割は、(厳禁だけが良いわけでなく)ブレーンストーミングの状況(協力的か競争的)次第では大いに意味があるということが分かった。

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