企業などがデータを有効活用できる環境をつくるためには、データを適切に管理することが欠かせない。それには多大な労力がかかるというネックがあった。人工知能(AI)はそんな状況を一変させる力を秘める。

トーマス・H・ダベンポート[Thomas H. Davenport]
米バブソン大学学長付 特別教授
1976年米トリニティ大学卒業、80年米ハーバード大学大学院で社会学の博士号(Ph.D.)取得。ハーバード経営大学院、米シカゴ大学、米ボストン大学経営大学院、米テキサス大学オースティン校などを経て現職。
トーマス・C・レッドマン[Thomas C. Redman]
米データ・クオリティー・ソリューションズ社長
米ベル研究所での勤務を経て、コンサルティング会社データ・クオリティー・ソリューションズ(ニュージャージー州)社長。「データ・ドック」の異名を持つ。
(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 組織全体でデータを活用できる環境をつくるために、データ管理は非常に重要だ。効果的なデータ管理は組織内の摩擦、予測精度の低下、単純なアクセス不能などデータの不備に起因する問題を、理想的には発生する前に最小化する。

 しかしデータ管理には労力がかかる。データのクリーニング、抽出、統合、カタログ作成、ラベル付け、整理を行い、データに関連する多くのタスクを定義して実行する必要があるため、データサイエンティストや肩書に「データ」が付かない従業員はしばしば不満を抱くことになる。

 AIは何千もの方法で活用されているが、あまり目立たない分野の一つが、こうしたデータ管理の改善だ。AIが重要な役割を果たせると考えられる機能は5つある。

①分類

 ソーシャルメディアの中心が画像や動画になるにつれ、分類や抽出の対象となるデータの規模はますます大きくなっている。最近のオンライン環境では、不適切な投稿を特定するためのコンテンツ監視はAIなしでは大規模に行えない。

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