この記事は日経ビジネス電子版に『「超柔軟な働き方」で「燃え尽き症候群」と「離職」を防げるか』(2月21日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月2日号に掲載するものです。

新型コロナ下、「ハイパーフレキシビリティー」という単語が聞かれるようになった。自由度の高い休暇制度を指す。よい施策に思えるが、そこにはリスクもある。本稿ではより広い視点からメリット・デメリットを探る。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
トーマス・ルーレ[Thomas Roulet]
英ケンブリッジ大学 組織論准教授
投資銀行、ロンドン、ワシントンDCの国際組織での活動を経て現職。著書に『The Power of Being Divisive: Understanding Negative Social Evaluations』(Stanford University Press、2020)。
ザリア・ジェイザー[Zahira Jaser]
英サセックス大学 ビジネススクール助教授
米JPモルガン・チェースなどを経て現職。著書に『The Connecting Leader: Serving Concurrently as a Leader and a Follower』(Information Age Publishing、2021)の編集者。

 私たちは現在、米国や英国内を筆頭に、無制限の有給休暇が取得できる制度や強制的に有給休暇を取得させる制度など、これまでにない制度が導入され始めているのを目の当たりにしている。例えば英ロンドンの証券会社フィンキャップ(FinnCap)は、従業員が長時間労働を強いられていたコロナ禍の厳しい1年を鑑みて、最低4週間の休暇を強制的に取得させると発表した。

 オンラインカウンセリングのスタートアップ企業であるスピル(Spill)は、全社員に対して2週間のクリスマス休暇を取得するよう促した。さらに、燃え尽き症候群になることを避けるために、管理職層が自ら休暇を取得して模範的な行動をとるという休暇誓約書を提出させた。

 同様に、米コンサルティング会社であるデロイト(Deloitte)も、有給休暇の取得方法に無限の柔軟性を持たせる予定だ。デロイトのような企業にとって、こうした方針は企業ブランディングの一環であり、コロナ禍のニューノーマル(新常態)における柔軟な働き方への極端なシフトを示している。

 有給休暇を無制限に取得できる制度は、1年間にいつ、どれだけの休暇を取得するのかを従業員が(同僚と調整しながら)自由に選択できる。この制度を運用する上で重要なのは、ニューノーマルにおける柔軟な働き方(ハイパーフレキシビリティー)においても、チームが成果を出し続けると企業が信じられることである。一方で、強制的に有給休暇を取得させる制度は、従業員が仕事のプレッシャーから解放されるための休暇が少なすぎるという事実に基づく。

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