この記事は日経ビジネス電子版に『「ライフ・シフト」のグラットン氏が語るコロナ禍の6つの学び』(2月8日)、『グラットン教授「人生100年、働く『場所』『時間』の見直しを」』(2月9日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月28日号に掲載するものです。

人生100年時代、日本の働き方は危険だと指摘する英ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授と慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授。必要なのは柔軟な「場所」と「時間」だという。

リンダ・グラットン[Lynda Gratton]
英ロンドン・ビジネス・スクール教授
アンドリュー・スコット氏との共著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)が日本でベストセラー。世界経済フォーラムの「新しい教育と仕事のアジェンダに関する評議会」の責任者を務めた。世界で最も権威ある経営思想家ランキングである「Thinkers50」で、世界のビジネス思想家トップ15にランクイン。
前野隆司[Takashi Maeno]
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
1962年生まれ。東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了後、米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶応義塾大学理工学部教授、米ハーバード大学客員教授などを経て現職。現在はヒューマンインターフェース、ロボット、教育、地域社会、ビジネス、幸福な人生、平和な世界のデザインなどの研究に従事。
小巻亜矢[Aya Komaki]
サンリオエンターテイメント社長
1959年生まれ。83年にサンリオ入社。結婚を機に退職。化粧品の販売員などを経て2002年にサンリオ関連会社に復帰。13年に東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。19年6月から現職。子宮頸(けい)がん予防啓発活動「Hellosmile(ハロースマイル)」委員長、SDGsプラットフォーム代表理事、松竹の社外取締役などを務める。

 日経ビジネスLIVEは2021年10月5~7日の3日間、大規模ウェビナー「The Future of Management 2030:資本主義の再構築とイノベーション再興」を開催し、2030年の未来を展望する議論を展開した。6日の基調講演「人生100年の幸せな働き方と社会変革」は、英ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授、モデレーターとしてサンリオエンターテイメントの小巻亜矢社長が登壇。雇用の未来と「幸福な」マネジメントを議論した。

小巻亜矢氏(サンリオエンターテイメント社長、以下小巻氏):人生100年と言われるように、私たちは以前より健康的に長生きできるようになりました。急速な変化の中、前向きな雇用や働き方を社会全体で考える必要があります。英ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授、よろしくお願いいたします。

リンダ・グラットン氏(英ロンドン・ビジネス・スクール教授、以下グラットン氏):平均寿命は10年ごとに約2年延びていて、私たちの子どもが100歳まで生きる可能性もとても高い時代です。30年間病気とともに生きるのではなく、健康的に長生きするためには、どこでどのように暮らすかについての選択が必要です。

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