この記事は日経ビジネス電子版に『【動画配信】「資本主義には三方よしが必要だ」ミンツバーグ教授(上)』(2021年12月15日)『【動画配信】「まず社会をたださなければ、資本主義は直らない」ミンツバーグ教授(中)』(2021年12月16日)『「長期的に計画しても無駄。必要なのは行動だ」ミンツバーグ教授(下)』(2021年12月17日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月7日号に掲載するものです。

経営学の泰斗、カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院のヘンリー・ミンツバーグ教授が登壇。中央大学国際経営学部のダニエル・ヘラー特任教授と共に、ポストコロナの資本主義社会に求められる国や企業のリーダー像を議論した。

ヘンリー・ミンツバーグ[Henry Mintzberg]
カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院教授
1939年生まれ。68年米マサチューセッツ工科大学で博士号取得(Ph.D.)。著書に『MBAが会社を滅ぼす』(日経BP)、『戦略サファリ』(東洋経済新報社)など多数。近年は資本主義の考察を続ける。世界の企業管理職が相互交流する共通プログラムを主宰している。(写真=村田 和聡)
ダニエル・ヘラー[Daniel Heller]
中央大学国際経営学部特任教授
2007年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。信州大学経済学部専任講師、東京大学大学院経済学研究科COEプロジェクト特任研究員などを歴任。横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授などを経て20年4月から現職。

 2021年10月5~7日に開催された日経ビジネスLIVE「The Future of Management 2030:資本主義の再構築とイノベーション再興」。5日の基調講演では、世界的な経営学者、カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院のヘンリー・ミンツバーグ教授と、ミンツバーグ教授と長年親交がある中央大学国際経営学部のダニエル・ヘラー特任教授が登壇した。日経ビジネス編集長の磯貝高行がモデレーターを務め、資本主義の再構築について議論した。

磯貝高行 日経ビジネス編集長(以下磯貝):本セッションは、カナダ・マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授より、資本主義社会の再構築をテーマにお話しいただきます。その後、経営学者で中央大学国際経営学部特任教授のダニエル・ヘラーさんを交えて、ポストコロナの資本主義について討論します。

 その前に1つクイズです。ミンツバーグ教授の考えに一番近いコンセプトはどれでしょうか。

 (A)CSR(企業の社会的責任)、(B)SDGs(持続可能な開発目標)、(C)三方よし、(D)ESG(環境・社会・企業統治)

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 視聴者の85%の方がCの「三方よし」、売り手・買い手・世間のウィン・ウィン・ウィンを選んでいます。正解はCの「三方よし」でした。これはどういうことなのか、ミンツバーグ教授にお話しいただきましょう。

ヘンリー・ミンツバーグ カナダ・マギル大学教授(以下ミンツバーグ氏):非常に勇気付けられる結果です。SDGsはいいターゲットですが、抽象的で、何を意味するのか不明瞭です。CSRは非常に重要ですが、言葉だけではなく、実行に移さなければ意味がありません。「グリーンウオッシュ」とも呼ばれる虚偽的な行動の場合もありますからね。

 対して私が理解する三方よしは、私の考え方と大変よく似ています。私の前世は日本人だったのでしょう(笑)。

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