この記事は日経ビジネス電子版に『社内から革新生む「ソーシャルイントラプレナーシップ」』(2021年12月28日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月24日号に掲載するものです。

企業の社会的責任(CSR)や企業の社会的価値などのテーマが世界的に話題だ。中でも注目を集めているのが、ソーシャル・イントラプレナーシップの考え方である。従業員が社会貢献で起業家精神を発揮するメリットとは。

デビー・ハスキ=レーベンサール[Debbie Haski-Leventhal]
豪マッコーリー大学経営学部教授
CSR(企業の社会的責任)やボランティア精神などを研究、パーパス経営などの実現に向け企業と協働。著書に『Strategic Corporate Social Responsibility: A Holistic Approach to Responsible and Sustainable Business』(近日出版予定)など。
アンテ・グラヴァス[Ante Glavas]
米バーモント大学グロスマン経営大学院助教授
米ケースウエスタン大学で組織行動論の博士号を取得(Ph.D.)。2017年から現職。企業の社会的責任(CSR)について数多くの査読論文を発表。米ノートルダム大学在職中、Professor of the Yearに選出された。

 「ソーシャル・イントラプレナーシップ(social intrapreneurship)」という言葉がある。これは、起業家が社会問題を解決するために組織を立ち上げる「ソーシャル・アントレプレナーシップ(社会的な起業家精神)」と、従業員が新しい製品やサービスを革新する「ビジネス・イントラプレナーシップ(社内での起業家精神)」を組み合わせた造語である。

 従業員がソーシャル・イントラプレナーシップを発揮することにより、企業の社会的責任(CSR)を推進することができるため、世界の様々な企業で徐々に取り入れられ始めている考え方である。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 例えば、オーストラリアの大手銀行ウエストパックでは、社員個人やチームが自ら目標を決めて企業ボランティアや寄付をすることを推奨している。2017年当時、政策コンサルタントだったダニエル・ヘイコックスは、ウエストパックの支援を利用して、難民向けの金融リテラシー・プログラムを開始した。結果的に彼は、チーム全員を巻き込んだ素晴らしいCSRプロジェクトを始めることに成功している。

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