企業が成長するには、顧客ニーズを捉え、価値ある商品・サービスを提供する必要がある。では顧客を理解するためには、経営者や現場はいかに顧客に向き合えばいいのか。顧客起点の成功事例から解き明かしていく(7月12日の日経ビジネスLIVEを再構成)。

(写真=右:北山 宏一)
(写真=右:北山 宏一)
今、求められる「顧客起点」
 これまで約40社の経営を支援し、200人を超す経営者に助言してきたStrategy Partners代表の西口一希氏は、顧客離れや、売り上げの鈍化・減少など、「成長の壁」にぶつかり、収益が伸びないことに悩む多くの経営者の話を聞いてきた。その経験から「企業の成長に伴い、顧客よりも財務の数字や組織運営に関心を向けるなど、経営が顧客から離れてしまう問題」に気づいた。6月に出版した著書『顧客起点の経営』(日経BP)の中でも、「経営者のみならず組織全体が顧客を理解し、顧客に価値を見いだしてもらえる製品やサービスを提供し続けられるよう、顧客起点を目指すことが重要だ」と提唱する。

 経営コンサルティングなどを手掛け、「顧客起点の経営」を提唱する西口一希氏が、「顧客起点で事業に取り組む優れたケース」として挙げるのが、ミスミのデジタル機械部品調達サービス「meviy(メビー)」だ。

 そこで日経ビジネスLIVEは7月、ミスミグループ本社常務執行役員・ID企業体社長の吉田光伸氏をウェビナーに招き、meviy事業のポイントを語ってもらうと同時に、西口氏と顧客起点について論じ合ってもらった。

吉田氏:ミスミグループは製造業で必要なあらゆる部品の提供を目指し、3000万点を超える商品をカタログで提供しています。グローバルの顧客数は33万社を超え、ものづくり産業のインフラとしての役割を果たしています。

 ミスミの強みは独自の受注生産システムにあります。注文を受けてから金属や樹脂を加工し、標準2日で出荷。納期順守率が99.96%という、「時間価値」を提供しているのです。

手間や時間のかかる発注作業をデジタル化することで労働生産性を高め、働く人がより創造的な業務に時間を振り向けられるようにした(吉田氏の発表資料から抜粋)
手間や時間のかかる発注作業をデジタル化することで労働生産性を高め、働く人がより創造的な業務に時間を振り向けられるようにした(吉田氏の発表資料から抜粋)
[画像のクリックで拡大表示]

次ページ 生産性改革の時代に突入