「お客様第一主義」「顧客目線」など、顧客のニーズや感覚を大切にする言葉を多くの企業が経営目標に掲げる。だが、果たして経営者はどれほど顧客の心を見ているのだろうか? 事業の結果でしかない売り上げや利益など財務の数字にばかりとらわれていないか──。化粧品からオンラインサービスまで、数々のブランドや事業をことごとくヒットさせてきた西口一希氏が今こそ必要な顧客理解の方法論を説く。

<span class="fontBold"><span class="fontSizeL">西口一希氏</span><br />M-Force 共同創業者 / Strategy Partners 代表</span><br />P&Gで「パンパース」「パンテーン」などのブランド事業を手掛け、2006年からはロート製薬でスキンケアブランド「肌ラボ」を担当し、売り上げを8倍に伸ばした。15年からはロクシタンジャポンの社長として2年で最高収益の実現に貢献。スタートアップのSmartNewsでは日本と米国のマーケティング責任者として時価総額1000億円を超える成長に重要な役割を果たした。近年は経営およびマーケティングのコンサルティング活動と投資活動に従事。<br />(写真=北山 宏一)
西口一希氏
M-Force 共同創業者 / Strategy Partners 代表

P&Gで「パンパース」「パンテーン」などのブランド事業を手掛け、2006年からはロート製薬でスキンケアブランド「肌ラボ」を担当し、売り上げを8倍に伸ばした。15年からはロクシタンジャポンの社長として2年で最高収益の実現に貢献。スタートアップのSmartNewsでは日本と米国のマーケティング責任者として時価総額1000億円を超える成長に重要な役割を果たした。近年は経営およびマーケティングのコンサルティング活動と投資活動に従事。
(写真=北山 宏一)


CASE 1

ロクシタンジャポン
顧客を見失ったブランドの再興

<span class="fontBold">独自性の高い商品で人気を集めるロクシタン</span>(写真=Shutterstock)
独自性の高い商品で人気を集めるロクシタン(写真=Shutterstock)

 南仏プロバンス地方で生まれ世界90カ国以上で事業展開するライフスタイルコスメ、ロクシタン。2000年代前半に日本に進出し、百貨店を中心に出店を重ね、売り上げを伸ばしていた。

 売り上げを支えていたのは、コンセプトや商品に強い愛着を持つ「ロイヤル顧客」だ。ロクシタンは基本的に自社店舗のみで販売し、南仏を彷彿(ほうふつ)とさせる美しい店頭展開とPRを軸にして、在庫を抑え、「すぐに売り切れてしまう」ブランドとして知られた。その結果、多くのロイヤル顧客が全ての新商品を収集するかのように競い合って購入するまでになっていた。数では上位16%の顧客の売り上げが年度売り上げの42%、利益の100%を占めていた。

 日本での成功がロクシタンの全世界売り上げをけん引し、10年には香港の株式市場に上場した。だが、この頃から費用が積み上がり、売上高は伸びていたものの利益率が下がっていた。

 売り上げは伸ばしつつ、利益率の倍増を2年以内に「両立」することを使命として、私は15年に日本法人代表に就任した。着任早々に分かったのは、売り上げの維持のために従業員の残業や休日出勤が常態化し、離職率も高いという事実だった。

 そこで私は、売上高の源泉、費用、収益向上の方法を見極める分析と調査に着手した。その結果、以下の実態が明らかになった。

  • 00年代前半から14年の間に、年間の新商品投入が3回から15回に急増
  • 店舗数は国内30店舗から100店舗に
  • メディア投資の大幅な増加、従業員数の増加、離職者の後を埋めるための採用活動、外部の代理店連携、物流サポート、IT導入など業務の増加により費用が利益を圧迫している。

 状況を打破するために、私は、顧客心理の分析を進めた。7人の本部長にヒアリングし、顧客が自分で買って自分で使う自己消費目的とギフト目的で購入する割合を聞くと、7人は共通して「3割程度がギフト目的」と返答した。

 ロクシタン内部でもギフト需要の重要性は認識しており、ギフト向けのラッピングや企画提案も実行していた。データ分析では実際の割合は分からないため、私は店舗を訪問し、店長やスタッフに幹部に向けたのと同じ質問をしてみた。その結果、ブラックボックスを解明する大きな事実が分かった。

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