この記事は日経ビジネス電子版に掲載した『地方創生に身を焦がす』を加筆・再編集して雑誌『日経ビジネス』に掲載するものです。

ふるさと納税総合サイトを運営するトラストバンク(東京・渋谷)を創業した。もともと起業とは縁遠い生活だった。ずっと都会で働きたいと漠然と思っていた。バブル崩壊後の就職活動で挫折を味わい、その後も転職を繰り返す時期が続いた。

 
<span class="fontBold">須永珠代[すなが・たまよ]氏</span><br> 群馬県伊勢崎市生まれ。2012年4月にトラストバンクを設立し、同年9月、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を開設。「自立した持続可能な地域をつくる」との目標を実現するために様々な新規事業を手掛ける。観光庁の検討会の委員なども務めた。20年1月にトラストバンクの会長兼ファウンダーに就任した。(写真=的野 弘路)
須永珠代[すなが・たまよ]氏
群馬県伊勢崎市生まれ。2012年4月にトラストバンクを設立し、同年9月、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を開設。「自立した持続可能な地域をつくる」との目標を実現するために様々な新規事業を手掛ける。観光庁の検討会の委員なども務めた。20年1月にトラストバンクの会長兼ファウンダーに就任した。(写真=的野 弘路)

 トラストバンクは2012年の創業時に「信頼をためる」という意味で名付けた会社です。ふるさと納税総合サイト最大手の「ふるさとチョイス」を運営しています。

 20年1月、私はトラストバンク代表から離れました。今は会長兼ファウンダーという肩書。興味深い技術を持つ人に会いに行ったり、地域に住んでいる面白い農家の方に会いに行ったりと、自由気ままな活動をしています。

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 今でこそ起業の経験を皆さんにお話ししていますが、もともと、私は起業とはほど遠いところにいました。「それなりの人生」を歩めればいいだろうと思っていたのです。

 学生時代を振り返っても、ただ遊ぶことしか考えていませんでした。高校生のときは当時ブームだったバンド活動に明け暮れていましたし。

 これといって大学で勉強したいものも特にありませんでした。それでも大学に進学したのは、単に都会に出たかったから。自分が地方出身であることに相当なコンプレックスを抱いていたのです。

 大学時代はサークル活動に精を出し、ボディコンファッションをまとって「マハラジャ」で踊る日々を過ごしました。

 時代はバブル経済のまっただ中。あの時代を知っている人には分かってもらえると思いますが、これからは明るい未来が待っている、そんな雰囲気で世間が覆われていました。

 何となくいい会社に入って、それなりの給料をもらえればいい。本人の意思とは関係なく地方に転勤させられる総合職は絶対に嫌で、できれば転勤もなくずっと都会で生活できる一般職枠の事務職がいいなと漠然と考えていました。

 甘い考えでした。就職活動を迎える少し前、むなしくもバブル経済が完全に崩壊してしまったのです。

 今のようにインターネットで就職面接のエントリーができる時代ではありません。就職面接を受けるために、まず企業の就職説明会に参加するという流れでした。

 送られてきた就職活動用の分厚い冊子を見て、とにかく片っ端からはがきを書いて応募しました。でも、どこからも一切連絡がありませんでした。

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