金属加工会社を設立して50年、利益を出すことにこだわり続けてきた。小学校を卒業してすぐに働かされた少年時代に感じた引け目が経営者への道を開いた。商売の才能はあるものの、上から押さえつけるやり方だった父が反面教師となった。

(写真=栗原 克己)

 昨年、エーワン精密を設立して50周年を迎えました。そんな記念の年に新型コロナウイルスの感染拡大が重なってしまいました。世界的に生産活動が停滞した影響を受けて2020年6月期は売上高と利益が減りましたが、それでも経常利益率は26%を確保できました。従業員数が約100人の企業としてはなかなかの業績だと自負しています。

 37年間にわたって社長を務め、07年からは相談役として経営陣に助言する立場になりました。50年間、ずっとこだわってきたのは利益です。不況の時も、利益が出ない仕事を受けて売り上げを追うことはせず、次の好況に向けた準備をしてきました。リーマン・ショックの時は新しい工場棟を建てたし、今回のコロナ禍でも設備投資を進めました。そうした経営のおかげか、今では10年ぐらい売り上げがゼロでも社員を1人も解雇しないで済むほど潤沢な内部留保があります。

30%前後の経常利益率を誇る
●エーワン精密の業績推移(6月期)
(写真=栗原 克己)

 「コレットチャック」と呼ばれる消耗工具を主力とする金属加工業のエーワン精密で、なぜこうした経営ができたのか。不思議に思われる方も多いようです。確かに、いろいろな困難を懸命に乗り越えてきた人生でした。私にとって利益にこだわることは当たり前でしたが、そこには若いころの経験が大きく影響しています。まずは私の生い立ちから振り返ってみましょうか。

 私が生まれたのは1939年。父は「ろくろ屋」、つまりろくろを回して金属を加工する金属ひき物業の町工場を東京で営んでいました。

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この記事はシリーズ「エーワン精密・梅原相談役の「不屈の路程」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。