賃料収入を保証するシェアハウスに投資し莫大な借金を負う被害者が続出した「かぼちゃの馬車」騒動。社会問題となった金融事件では、預金通帳の改ざんや空室率などを記した家賃収入表の偽装があった。関与していたのはスルガ銀行。“地銀の優等生”はなぜ、めちゃくちゃな融資に手を染めたのか。

「借金に悩み、自殺者まで出たんだ」
被害者の弁護士は声を荒らげた
2020年3月、銀行側と一部の被害者で和解成立
2018年4月。怒気に満ちたその部屋は、まさに修羅場だった。
東京・日比谷公園に近い弁護士会館の一室。50人ほどが詰め寄せた会議室で1人の男性が号泣した。「スルガ銀行・スマートデイズ(SS)被害者同盟」の弁護団団長を務める弁護士の河合弘之がスルガ銀に対し「この借金に悩んだ揚げ句、妻と2人の子どもを残して自殺した者まで出たんだぞ!」と声を荒らげたときだ。1億円を超える借金を抱えた男性は感情を抑えられなかった。
「スルガ銀と被害者の交渉は毎回が真剣勝負。苦しい戦いだった」と河合は振り返る。
SS被害者同盟が巻き込まれたのは、スルガ銀行(静岡県沼津市)による不正融資と、不動産会社スマートデイズ(18年5月に経営破綻)などがオーナーに不動産を高値づかみさせたシェアハウス問題。東京地方裁判所の調停勧告により、20年3月にSS被害者同盟の257人とスルガ銀の間で和解が成立した。条件は2つ。「融資を受けてシェアハウスを購入した者が当該不動産を手放す」「スルガ銀は全てのローン債権を消滅させる」ことだ。
これによりオーナーは、借金返済の代わりに、スルガ銀が債権を譲渡した第三者にシェアハウスを引き渡すことで債務を解消する「代物弁済」が成立した。
河合によると和解による代物弁済はシェアハウス343棟分。スルガ銀の融資金額は約440億円だった。これは問題解決に向けた第一歩だ。スルガ銀は18年3月末でシェアハウスに関する融資を受けた顧客を1258人、融資総額は2035億8700万円と公表している。現在、第2陣として277人が同様の調停を申し立てている最中だ。
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