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鴻海(ホンハイ)精密工業は2016年8月にシャープへの3888億円の出資を完了。「信賞必罰」を掲げる戴正呉社長の下、新しい経営体制のシャープはV字回復を果たした。ところが、その後は足踏みが続く。「どうなってしまうのだろう」と不安の声も漏れ始めた。

 「うちの部門はこれからどうなってしまうのだろう」。鴻海の傘下に入ってから4年がたった今、シャープの中核であり続けた液晶パネル部門の社員すら不安の色を見せる。

 こんなはずではなかった。

 3888億円を出資した鴻海グループはシャープの株式の66%を握った。退任した髙橋興三に代わって社長に就いたのは鴻海の副総裁、戴正呉(現在はシャープ会長兼CEO=最高経営責任者)。創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)に次ぐナンバー2とされる人物だ。

 「信賞必罰の人事を徹底する」「挑戦を避け、十分な成果を出せない場合にはマネジャーは降格する」。戴は就任後、シャープ社員向けのメッセージで強烈な先制パンチを浴びせた。

 シャープを「金持ちの息子のよう」と評していた戴はコスト管理を徹底。社長決裁を求める案件の基準を「300万円以上」まで引き下げて、会社の細部まで目を光らせた。太陽電池事業の不振の要因だった原材料の長期契約についても調達先と粘り強く交渉。見直しにこぎ着け、「約101億円を取り戻した」と誇った。

 「シャープは大きい魚ではなく、速く泳ぐ魚を目指す」。社員にスピードアップを要求した戴は、「今日のことは今日決裁する」と猛烈なスピードで意思決定をしていった。その結果、出資前の2016年3月期に2500億円強の赤字だったシャープの最終損益は、2年後の18年3月期には約700億円の黒字にV字回復。17年12月には東証1部への復帰も果たした。2年足らずの復活劇に、シャープ社員も失っていた自信を取り戻していった。

シャープの社長に就任した戴正呉は「8K」と「AIoT」で成長する戦略を打ち出した(写真=毎日新聞社/アフロ)

 ところが、急激な回復はシャープの潜在能力をむしばんでいた。

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