
10年ほど前から頻繁に耳にするようになった「ビッグデータ」だが、上手に活用するのは簡単ではない。慶應義塾大学の高田英亮教授は、うまく活用するためには5つのポイントがあると指摘する。「予測」「実験」「オープン・マーケティング」「イグノランス」「多様・正確・迅速」がキーワードだ。
![<span class="fontBold">高田 英亮 教授[Hidesuke Takata]</span><br />1981年生まれ。2004年慶應義塾大学商学部卒業、06年同大学大学院商学研究科修士課程修了、09年同博士課程単位取得退学。慶應義塾大学商学部助教、専任講師、准教授を経て、20年から現職。博士(商学)。(写真=的野 弘路)](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00133/062100025/pf.jpg?__scale=w:500,h:372&_sh=0e40cf0bb0)
1981年生まれ。2004年慶應義塾大学商学部卒業、06年同大学大学院商学研究科修士課程修了、09年同博士課程単位取得退学。慶應義塾大学商学部助教、専任講師、准教授を経て、20年から現職。博士(商学)。(写真=的野 弘路)
「ビッグデータ」という言葉をよく耳にする。Googleトレンドを用いて、すべての国を対象に2004年1月から21年3月まで、「Big Data」というキーワードがグーグルでどの程度検索されているか(最大値=100)を調べてみると、下のグラフの通りだった。その検索量(人気度)は11年後半以降に増え始め、14年から20年まで毎年平均70を超える高い値を示している。この結果から「ビッグデータ」という言葉が世間に広がり浸透していったのは、ここ10年ほどといえるだろう。
ビッグデータは現在、ビジネスや社会の様々な場面で活用されている。例えば、工場では製品の製造工程の各段階で蓄積されるビッグデータが生産の効率化や品質の向上のために生かされている。交通関係では走行中の車から収集されるビッグデータに基づいて、交通量や最適なルート、災害時に通行可能な道路など、有用な情報が提供されている。健康管理では身体に装着したセンサーから得られるビッグデータを用いて、患者や高齢者の健康状態をモニタリングし、体調の異変を早期に発見する試みが行われている。
筆者の専門であるマーケティング戦略でもビッグデータが活用され、新奇・有用な新製品・新サービスやマーケティング施策の開発・導入が行われている。ここではその具体例として、20年1月24日付の「日経MJ」に掲載されたヤフーの記事を紹介する。
ヤフーの強みは、検索サイトやEC(電子商取引)、質問サイトなど、100以上ある自社のソースから得られる多面的なビッグデータを単体で擁する点である。ヤフーは現在、その強みであるビッグデータを他社が活用できるサービスを提供している。このサービスを利用してビッグデータから営業現場では拾いきれない消費者のインサイトを引き出し、例えば、三越伊勢丹は「抱っこひもをつけても着やすいロングスカート」というヒット商品をプライベート・ブランドで開発した。また、ミツカンは「アウトドアで鍋料理を作る男性」を想定した「キムチ鍋つゆ」の新たなテレビCMを制作した。
これらの事例のように、様々な企業が現在、マーケティング戦略でビッグデータを活用している。ではその際に注目すべき点や注意が必要な点は何だろうか。今回はそれらの点を、既存研究を踏まえて指摘したい。キーワードは「予測」「実験」「オープン・マーケティング」「イグノランス」「多様・正確・迅速」の5つである。
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