慶應義塾大学商学部による誌面講義のシリーズ6は高田英亮教授によるマーケティング戦略とチャネル研究。楽器を習うのと同様に、マーケティング戦略も基本に沿ってたゆまぬ努力を続けることが大切だという。企業は、市場調査によって顧客ニーズを知り、マーケティング・ミックスを実践することが求められる。

<span class="fontBold">高田 英亮 教授[Hidesuke Takata]</span><br>1981年生まれ。2004年慶應義塾大学商学部卒業、06年同大学大学院商学研究科修士課程修了、09年同博士課程単位取得退学。慶應義塾大学商学部助教、専任講師、准教授を経て、20年から現職。博士(商学)。(写真=的野 弘路)
高田 英亮 教授[Hidesuke Takata]
1981年生まれ。2004年慶應義塾大学商学部卒業、06年同大学大学院商学研究科修士課程修了、09年同博士課程単位取得退学。慶應義塾大学商学部助教、専任講師、准教授を経て、20年から現職。博士(商学)。(写真=的野 弘路)

 マーケティング論は、消費者行動論、マーケティング・リサーチ論、マーケティング戦略論、製品開発論、価格論、広告論、流通チャネル論、グローバル・マーケティング論など、様々な各論から構成される。これらの中で、筆者の専門は、マーケティング戦略論と流通チャネル論である。

 マーケティング戦略論では、企業の理念・志向、資源・知識・ケイパビリティ、企業内の各部門のパワー、ビッグデータ、AI(人工知能)などが企業のマーケティング戦略や成果に及ぼす影響が研究対象となる。流通チャネル論では、企業が製品を顧客に届ける際のチャネル形態の選択と管理が中心的な問題である。本連載ではこの2つの分野それぞれから、筆者の近年の研究に関連するトピックを2つずつ取り上げ、学術の世界における重要な成果を紹介していく。

 何事においても重要なのは基本である。筆者は幼少の頃からヴァイオリンを習い、今でも時々自宅で弾いているが、ヴァイオリンでは「音階→エチュード→課題曲」という流れで練習を重ね、弓を動かす右手と弦を押さえる左手の双方の技術を鍛えることが基本である。この基本を徹底することで、ヴァイオリン奏者は難曲を含む様々な楽曲を弾きこなすことができるようになる。

 では、マーケティング戦略における基本とは何だろうか。それは「R→STP→MM」というプロセスに従って戦略を策定し実行することだろう。このプロセスは、マーケティング論の第一人者として知られる米ノースウェスタン大学のフィリップ・コトラー名誉教授が著書の中で示しているものである。本連載の第1回では、他の分野と同様にマーケティング戦略でも「基本に沿ってたゆまぬ努力を重ね、ベストを尽くすことが大切である」ということを、筆者の研究成果も交えながらビジネスパーソンの皆さんに伝えたい。

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