少子高齢化が進み、経済成長も鈍化している日本は市場としての魅力を失ってしまったのか。清水聰教授は他の国にはない先端技術や感度の高い消費者の存在が世界でも価値を持つと訴える。時には批判的な意味合いで使われる「ガラパゴス化」こそが日本発のマーケティングを生み出す素地だ。

Akira Shimizu
1963年東京生まれ。86年慶應義塾大学商学部卒。同大学大学院修士課程、博士課程を経て、91年明治学院大学経済学部専任講師、助教授。2000年同大学経済学部教授。09年慶應義塾大学商学部教授。14~15年米ピッツバーグ大学Katz Graduate School of Business訪問研究員。博士(商学)。近著に『New Consumer Behavior Theories from Japan』(単著、Springer、2021)がある。(写真=的野 弘路)

 グローバル化が叫ばれる中、日本は今後、マーケティングでどのような役割を果たせるだろうか。日本が日の出の勢いで伸びていた時代は、多くの欧米企業が日本に進出し、日本でのマーケティング活動に躍起になっていたが、それらの企業は中国やインド、またはベトナムやタイなど、人口が多く、経済発展が著しい国に移ってしまった。経済合理性だけを考えれば、少子高齢化、人口減少、経済成長力の鈍化、激しい競争、モノ余り、などの課題を抱える日本のマーケットに、わざわざ進出するメリットは確かにない。

 ただ、この連載で示してきたように、日本には他の国にはない先端技術やユニークな特性があり、その中で生活している感度の高い消費者や長寿者がたくさん存在している。国際マーケティングの研究では、日本は技術的に優れている国というイメージが高く、また同じ日本のブランドでも、その生産場所が日本でなければイメージが下がるという研究結果もある。つまり日本製、特に日本国内での展開がグローバルでみて価値を持つと考えられる。

日本展開でイメージチェンジ

 上記で示したように、短期的な経済合理性だけで考えれば、欧米企業にとって日本市場のメリットは少ないが、長期的な視点で考えた場合、自社のブランドの評価を上げ、アジアの消費者に対するゲートウェイとして用いることにメリットがあると考えられる。連載の最終回は、「NEWガラパゴスマーケティング」という名称で公益財団法人ハイライフ研究所と共同で研究している日本の役割を示していきたい。

 「ガラパゴス化」という言葉は、もともと世界のデファクトスタンダードから取り残されて、日本国内の独自規格が不利になる現象を示し、そこから派生して、日本国内の独自性が高い制度や文化への、批判的な文脈として用いられるようになった。ただ日本の独自性が、海外から評価されることも多い。日本独自の良さを海外に紹介していく「Cool Japan」活動への海外からの評価は、その最たるものだろう。

 また、海外から来た商品やブランドが、日本で独自の進化をして、ポジションを大きく変えることもある。たとえば米国では場末のドラッグストアで粗雑に売られている化粧品ブランドが、日本では百貨店で高級品として扱われていたり、同じく米国では所得の高い人が行かない飲食店が、日本では家族連れに人気のスポットになったりしている。つまり、日本で展開することで、イメージチェンジやイメージアップできる可能性があるのである。

続きを読む 2/3 日本での利用がブランドに影響

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