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経営判断を惑わす様々な罠(わな=トラップ)を、過去に遡るタイムマシンに乗って当時のメディアに流布していた言説などとともに分析することで、世間の風潮に流されない本物の価値判断基準を養おう。3回目は、前回のERP(業務基幹システム)ブームからさらに遡り、「SIS(戦略情報システム)」ブームを、成功事例とされたヤマト運輸、セブン‐イレブン・ジャパンの事例から分析する。

※本連載は日経ビジネス電子版「オンラインゼミナール」に掲載中のシリーズを雑誌に転載したものです。オリジナル記事はオンラインゼミナールの「逆・タイムマシン経営論 第1章 飛び道具トラップ」をご覧ください。

(写真=PIXTA)

講師プロフィル

杉浦 泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家兼ウェブプログラマー
(写真=的野 弘路)

1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマー。2018年1月にウェブサイト「決断社史」を立ち上げ、現在は「The社史」を運営する。

楠木 建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授
(写真=的野 弘路)

1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、同大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職。

 前回もお話ししたように、IT分野は飛び道具トラップがあちらこちらに埋め込まれた地雷原の様相を呈しています。今回はタイムマシンに乗って、バブル経済に沸いた1980年代後半を訪れ、当時空前のブームとなった「SIS(戦略情報システム)」を振り返ります。

 先進国の米国ではSISによって大きくシェアを伸ばすだけではなく、ライバルを倒産に追い込んだ会社もある。あなたの隣の会社が着々とSISに取り組み、ある日、気づいたら大きな差をつけられているかもしれない。先手必勝。出遅れは致命傷だ。
(出所:日経ビジネス 89年8月14日号 特集「しのびよるSISの脅威 成熟時代を勝ち抜く新経営手法」)

日経ビジネス1989年8月14日号 特集 「しのびよるSISの脅威 成熟時代を勝ち抜く新経営手法」

 戦略情報システム、略して「SIS」という言葉は、今では死語になったと言ってもよいでしょう。ITの専門家でさえ大半は「何それ?」という反応ではないでしょうか。「SIS(シス)死す」状態になって久しい今日このごろです。

用語解説

SIS

Strategic Information System(戦略情報システム)の略で「シス」と読む人が多かった。情報システムを競争優位に立つために活用する考え方で1980年代に広まった

日経ビジネス2020年2月24日号 58~63ページより目次