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 波乱万丈の経営者列伝「不屈の路程」。初回に登場するのはエイチ・アイ・エスの澤田秀雄氏。一代で誰もが知る旅行会社を築き上げ、今ではホテルやエネルギーにまで事業を広げる。自ら「失敗ばかり」と振り返る、経営者人生を語る。

(写真=的野 弘路)

 1980年の冬。私は東京・西新宿のマンションの一室を事務所として借りて、格安航空券の販売会社を立ち上げました。あれから今年で40年を迎えます。多くの方は私のことを、一代で会社を大きくした成功者だと思うかもしれません。ですが、私はこれまでたくさんの失敗を経験してきました。

 でも、失敗しても命までは取られません。お金がなくなるか、会社が潰れるか、それだけです。私はどんなときでも、布団に入れば5分で眠れます。そうでないと、体力が持ちませんからね。開き直って生きています。思ったような結果が得られないことはありますが、失敗から学べばいいのです。

2019年7月、ユニゾホールディングスへのTOBを発表した(写真=稲垣 純也)

 最近だと、昨年夏に発表した不動産会社のユニゾホールディングスに対するTOB(株式公開買い付け)もそうです。

 ユニゾはたくさんのホテルや不動産を持っています。エイチ・アイ・エスも「変なホテル」などホテル事業には力を入れていますし、安定した収入源として不動産も10棟ほど所有しています。だからユニゾと一緒になって発展していきたかった。

 2018年の終わりごろからユニゾに申し入れをして、株も買っていきました。19年3月には4.52%を持つ筆頭株主になり、再度申し入れをしましたが、同意は得られませんでした。そのため、45%まで買い増すTOBを19年7月に発表したのです。でも、ユニゾは私たちと一緒になることを最後まで望まなかった。結局、他の会社がホワイトナイトとして参戦してきたので、あきらめました。

 最終的には利益が出たので結果オーライですけどね。TOBが成立しないのであればと、株を売却しました。買ったときより高い値段で売れましたよ。

 ビルの一室から始まったエイチ・アイ・エスは、格安航空券の販売から、旅行ツアー、テーマパーク、ホテルと事業を拡大してきました。新しいものを見たい、知りたい──。私はその思いを原動力として、いろんなことに挑戦してきました。その過程ではうまくいかなかったことも数多くあります。決して成功ばかりでない、私の経営者人生。今回はそれを皆さんにお話ししましょう。

日経ビジネス2020年1月6日号 58~61ページより目次