「事業で業績を上げた人だけが社長になる時代は終わる」と常々、考えてきた。現業の執行力だけでなく、数字を読み解き、定量的に分析する力が経営のカギになるという。将来は会社と社会との境目が融解することすらあり得る。人材が集散しやすいほど強いと見る。

和田眞治[わだ・しんじ]氏
和田眞治[わだ・しんじ]氏
1952年島根県生まれ。成城大学経済学部卒業。77年日本瓦斯入社。入社5年目に北関東支店の課長に。当時、最も早い昇進だった。92年本社営業本部地区開発課長、96年西関東支店長。97年取締役に就任し、2000年常務、04年専務を経て05年に社長就任。22年5月、会長就任。(写真=大下 美紀)

 「あなたの会社にはCFO(最高財務責任者)らしい人がいない」

 前回お話ししたように、当社は2011年10月に米大手銀行、JPモルガン・チェースの投資部門傘下にあるファンド「OEP NG LLC」から出資を受け、提携しました。その後、両社で戦略的投資委員会を設け、四半期に1回程度、日本瓦斯の事業について様々な意見交換を始めたのですが、その場で強烈な一言を浴びたのです。

 委員会は、当社が実施しようとしている投資や、これまでの取り組みについての分析や評価をぶつけ合い、議論をする場です。そこで指摘されたのが「CFO不在」でした。その意味は「定量的に分析して判断できる人材がいない」ということです。

 その頃から、私は「従来型の経営構造ではだめだ」と思うようになりました。今でもそうですが、多くの日本企業はプロパーで営業や製品開発などの業績を上げた人が昇進し、そこから社長が選ばれる場合が多いようです。「稼いでなんぼ」と考えがちだからでしょう。しかし、現場の視点だけを重視して、定量的な分析が十分でないまま経営判断を下してもいいのだろうか。JPモルガン側はそこを突いてきたのです。

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