高い顧客満足度が大手企業の目に留まり、各地で次々と開業要請を呼び込んで急成長を果たした。6000室体制までのめどは立ったものの、需要を見極め、「規模拡大は1万室まで」とゴールを決める。学生時代のボランティア経験から、本業とのシナジーを発揮する稼げる社会貢献活動を目指して進む。
![穂積輝明[ほづみ・てるあき]氏](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00129/111400085/p1.jpg?__scale=w:500,h:355&_sh=0d60fe0170)
2012年6月にMBO(経営陣が参加する買収)で、サラリーマン社長からオーナー社長になりました。経営者としての意識が全く変わった。自分の人生とカンデオホテルズが一心同体になり、良くも悪くも逃げられなくなったわけです。覚悟を決めた経営者として、その入り口に立ったのは、この時だったと思います。
その翌月の12年7月、当社にとって転機となる出来事がありました。「日経ビジネス」のビジネスホテルランキングで1位になったのです。約6500人を対象にした顧客満足度調査で高い評価を頂きました。07年の開業当初は苦労しましたが、徐々に評価を頂いている実感はあった。ビジネスで使っていただいたお客さまが、週末に家族を連れて泊まりに来ていただいたり、「俺はカンデオしか泊まらないんだよ」と言ってくれるファンも増えてきたり。それがランキング1位という形で結実して、うれしかったですね。
そしてこの評価は、独立した我々を大きく後押しすることになります。
まず、記事を見たJR西日本傘下のJR西日本不動産開発から「ぜひ一緒にホテルの企画をやりたい」と飛び込みの連絡がありました。そこで当社からの提案で14年に開業したのが、福岡市の「カンデオホテルズ福岡天神」です。
昔の関わりを頼りに、私からも積極的にアプローチをかけました。不動産投資ファンドのクリードに在籍していた時代にホテルや不動産の海外視察でご一緒した、森ビル子会社の社長に電話してみたのです。すると「ああ、いつも昼間いなかった穂積さんね」と覚えていてくれました。
その視察で、朝食を食べ終わるとすぐに出かけて、夜までホテルを調べて回っていた私の姿が印象に残っていたようです。そのご縁で、松山市の中心市街地の再開発ビルに15年、「カンデオホテルズ松山大街道」を開業しました。
独立したばかりの当社にとって、JR西、森ビルという大企業のグループ会社と一緒に仕事をした実績は大きかった。一気に信用力が付き、案件が舞い込むようになりました。
ロードサイド型ホテルは車での来館が主なので、街の中心となる軸さえ押さえれば大丈夫。しかし都市型は、その軸から200~300m外れると集客力が大きく変わります。ましてや賃貸期間20~30年の長期契約ですから、軸が離れていく場所での開業は致命傷。「賃料を安くする」と持ちかけられてもお断りしています。
今年は、熊本市の中心部に「カンデオホテルズ熊本新市街」、宇都宮市のJR宇都宮駅前に「カンデオホテルズ宇都宮」を開業しました。どちらの県にも08年、ロードサイド型で進出しており、当時は中心市街地にホテルを出すのは夢でしかなかった。約15年の時を経て実現したのです。
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