不動産ビジネスのイロハを習得した後に、資金調達を学ぶべく、不動産ファンド「クリード」に転職した。土地・建物の付加価値を高める新規ビジネスとしてホテル事業を提案。運営会社の社長に就任した。立ち上げに奔走し、2年で1000室超の出店を実現したが、背後にリーマン・ショックの影が迫っていた。

穂積輝明[ほづみ・てるあき]氏
穂積輝明[ほづみ・てるあき]氏
1972年生まれ。京都大学3回生の時に不動産デベロッパー「スペースデザイン」でアルバイトを開始。正社員を経て、不動産ファンド「クリード」に転職し、ホテル事業を立ち上げて社長に就任。2012年にMBOでオーナー経営者として独立。現在、宿泊特化型でありながらラグジュアリーな4つ星ホテル「カンデオホテルズ」を25施設、4903室運営している。(写真=的野 弘路)

 学生アルバイトからそのまま入社した不動産デベロッパー「スペースデザイン」では3年間働きました。オーナー兼経営者の江副浩正氏のもと、外国人向けの高級サービスアパートメントやベンチャー企業向けサービスオフィスの事業立ち上げに取り組み、建物の完成後にオペレーションまで手掛けることで、付加価値を高める手法を学びました。

 江副氏に「3年働いて独立できない人は三流」と入社式で言われたことに触発され、その言葉通りに3年で退職しました。ただ、さすがにいきなり独立するのは無理だ、と。不動産で付加価値を生み出すノウハウは習得できたので、今度は資金調達を学ぶために不動産ファンドの「クリード」に入社しました。

 クリードでは社長直轄の部門で新規事業を担当しました。M&A(合併・買収)なども手掛けましたが、なかなか結果が出ない。ならば自ら事業を立ち上げようと考え、頭をひねりました。そこで生きたのがスペースデザインでの経験です。建設と運営を組み合わせることで差別化が可能なホテル事業を立案。無事、経営陣に認められました。

 2005年、私はカンデオ・ホスピタリティ・マネジメントの前身となる「クリード・ホテル・マネジメント」を立ち上げ、社長に就任します。ホテルの土地・建物は将来的にREIT(不動産投資信託)とし、運営会社はIPO(新規株式公開)する構想でした。

 07年2月に1号店をオープンし、それから08年6月までに8施設1000室超を一気に開業します。この開発スピードは業界最速だったのではないでしょうか。出店地域の選定、土地の確保、建物の設計・建設を同時進行しました。寝る間を惜しみ、死ぬ気で働きましたよ。1年のうち200日近くは出張でしたね。

 この時期に開業したホテルは、すべて地方のロードサイド。「野っ原商法」なんて揶揄(やゆ)されましたが、計画には緻密な計算がありました。